2009年夏CCS特集:ケムインフォナビ

大学発CCSソフト機能強化、最新研究成果を組み込みへ

 2009.06.24−ケムインフォナビは、東京大学工学系研究科の船津研究室(船津公人教授)で開発されたソフトウエアを「ChemInTool」の名称でシリーズ化し、インフォマティクス技術を活用した化学研究を支援している。国産ソフトとしての使い勝手の良さ、小回りの良さから着実に実績が広がりつつある。

 なかでもユーザー数の多いのが、統合ケモメトリックスソフト「Chemish」。モデリングとクラスタリング、変数選択という3大機能を備え、モデル式を用いた予測、逆解析、原子団寄与法などの利用が可能。

 近くバージョンアップの予定があるが、とくにデータ解析手法としてICA(インターディペンデッド・コンポーネント・アナリシス)がサポートされることが注目される。もともとは雑音の中から人の声だけを取り出すなど音声認識分野で使われる技術で、ケモメトリックス分野への応用は初。ただ、この手法で回帰分析を行うことにより、化学構造のどの因子が物性・活性に結びついているかをはっきり把握できるようになるという。これは、化学プラントの異常値を検知するソフトセンサーにも応用可能であり、そうした方面にもChemishを応用することが可能だということだ。

 さらに、SVM(サポートベクターマシン)の採用も計画中。これは、よく用いられる手法ではあるが使い方が難しいため、Chemishのチュートリアル機能と統合することでユーザビリティを高めたいとしている。

 一方、「ToMoCo」は分子設計と構造活性相関解析のための統合ソフトとして評価が高い。今年度内には、船津研究室で開発中の構造ジェネレーターを搭載する予定で、すでにプロトタイプは完成している。活性に関係する記述子の定義された範囲を満足させるかたちで、構造を自動的に発生させる機能を持っており、1分間に100万件の構造をジェネレートできる。かなりユニークな機能になりそう。

 また、新しいモデルとして、代謝酵素や代謝位置を予測するモデルも搭載していきたいという。

 これらに関連して、ケムインフォマティクスをさらに振興させるため、船津教授らが中心になって日本化学会情報化学部会の主催で国際シンポジウムを11月24日に開催する計画。詳しくは(http://cicsj.csj.jp/i_sympo/)まで。