2009年夏CCS特集:科学技術振興機構
異分野の科学情報を相互参照、データベース新サービス公開
2009.06.24−独立行政法人・科学技術振興機構(JST)は、利用者が順調に拡大中の「化学物質リンクセンター」(プロトタイプ版)に続き、今年3月末から「科学技術総合リンクセンター J-GLOBAL」(試行版)の公開を開始した。どちらも、インターネットの特性を生かし、異なるデータベースや知識分野を結びつけることで“情報”の発見や活用を推進することができる。ともに正式版への早期のレベルアップが待たれるところだ。
J-GLOBAL(http://jglobal.jst.go.jp)は、ばらばらに存在していた科学技術情報をつなぎ、利用者の発想を支援する新サービス。JSTが体系的に整備してきた文献の書誌情報(約600万件)、研究者情報(国内の大学・研究所などに所属する約20万人)、特許庁が発行する公開公報の書誌情報(約200万件)、公的な研究課題情報(約6万件)、国内の大学・研究所情報(約2万機関)、科学技術用語情報(約15万語)、化学物質情報(約260万件)、遺伝子情報(約4万件)、国内外の主要な学術雑誌の名称などの資料情報(約20万件)−を基本情報として収録し、相互に関連付けている。さらに、これらの基本情報から、外部サイトにある詳細情報をシームレスに参照することが可能。化学物質情報は日化辞Webへのリンクをたどって詳しく参照することができる。
とくに、産学連携や研究開発の計画立案時における課題探索、課題解決のためのヒント探しなどで、異分野・異業種の知や意外な発見が必要になるときに大きな力を発揮する。調べたいテーマに関して、個別のデータベース検索ではみえなかった情報源が自然にみつかるように設計されているので、情報の価値が何倍にも拡大するという。
今後は収録情報をさらに広げ、情報間の関連付けの精度をさらに高めるほか、情報の視覚化や分析などの新機能を盛り込んでいく予定。
一方、化学物質リンクセンター(http://chemlink.jp)は、JSTの日本化学物質辞書「日化辞Web」、独立行政法人・産業技術総合研究所の有機化合物スペクトルDB「SDBS」、独立行政法人・物質・材料研究機構の高分子DB「PoLyInfo」、神奈川県環境科学センターの化学物質安全情報提供システム「Kis-net」、国立医薬品食品衛生研究所の既存化学物質毒性DB「JECDB」を結びつけたもの。
日化辞Webで化学物質の名称や構造を調べたあと、再検索することなく物性・毒性やスペクトルデータを他のDBから知ることができるため、情報収集作業が大幅に効率化される。
日化辞Web自体も、文字列検索時の異表記への対応など利用者の視点で改善を進めてきており、J-GLOBALとの連携もさらに充実させていく。