2009年夏CCS特集:物質・材料研究機構

高分子DBリニューアル公開、異分野からの利用も促進

 2009.06.24−物質・材料研究機構(NIMS)は、物質・材料に関する世界最大級のデータベース(DB)をインターネットで発信。「MatNavi」(http://mits.nims.go.jp)をポータルに、各種物性DBやデータシート、さらに物性予測などのアプリケーションも公開している。すべて無料で利用できるが、現在の登録ユーザー数は約4万5,000人で、129カ国の研究者らが利用中。サーバーなどの強化も段階的に進めており、さらに使いやすい環境を実現していく考えだ。

 MatNaviから利用できるDB群のなかで、利用数が多く中心的な存在の1つとなっているのが、高分子DBの「PoLyInfo」。高分子材料設計に必要とされるさまざまなデータを、1929年以降の主要な学術雑誌から収集し、体系的に整理したもの。現在では、世界でも最大級の高分子DBに成長している。

 PoLyInfoは、このほどシステムを完全にリニューアルし、新機能を加えて新しく生まれ変わった。とくに、高分子の専門家だけでなく、異分野の研究者が高分子の情報を調べたいといった場合に、敷居を低く使いやすくすることを意識したという。

 検索結果には文字だけでなく構造式も表示されるのでイメージがわきやすくなったほか、自由に2軸を設定できるプロット図、サンプルリストのソーティング、ヒストグラムの改善、重合情報の表示など、さらに材料開発に有益なツールとなった。また、NMRデータへの直接リンクが設けられたことも操作性を大きく向上させているという。

 また、4月から公開開始した新DBとして「界面熱伝導率DB」がある。これは、結晶基礎DB「ポーリングファイル」に収録されているデータをもとに、金属と非金属、非金属と非金属の界面の熱伝導率や結晶構造、物理特性などを理論計算(フォノン散乱モデル)で求め、その計算結果をDB化したもの。この種のDBは世界初で、複合材料の熱物性の予測・制御、電子デバイスの熱設計などに利用できる。

 なお、NIMSのデータベースステーションでは、11月13日に恒例のシンポジウム「MITS2009」をつくばで開催する。材料データベースの活用事例を集めて供する予定で、事例講演のテーマを募集中である。