富士通九州システムズがADME関連システムを機能強化

予測ソフトなど2製品、4月から新体制で事業化

 2009.04.09−富士通九州システムズ(FJQS)は、化合物の体内動態を調べるADME(吸収・分布・代謝・排出)関連システムをバージョンアップし、あらためて販売開始した。数学モデルによってADME特性を予測する「ADMEWORKS」は機能強化されてバージョン5に、オンラインで利用できるADMEデータベースサービスはコンテンツを拡充してバージョン14となった。これらの製品は富士通九州システムエンジニアリング(FQS)が開発したものだが、4月1日付けで九州のSE会社3社が合併してFJQSが発足したため、現在はFJQSのテクノロジーソリューション本部が扱う体制となっている。

 ADMEWORKSバージョン5は、WindowsVista対応を行ってGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を改良。計算エンジンをコンポーネント化することにより、計算速度が2倍以上に高まった。

 予測モデル作成機能は、従来の遺伝的アルゴリズム(データを遺伝子とみなして構成した個体を作成し最適なパラメーターの組み合わせを抽出する手法)からPSO(Particle Swarm Optimization)特徴抽出(データを1つの群れとみなし最適パラメーターの抽出を行う手法)に変更し、モデル作成の高速化を実現している。さらに、予測モデルの精度向上のため、富士通製の半経験的分子軌道法ソフト「MO-G」をディスクリプターとして使用することが可能。

 また、あらかじめ用意している予測モデルのラインアップも強化し、従来の14種類(溶解性、CYP3A4阻害定性、CYP3A4阻害定量、CYP3A4代謝定量、CYP2D6代謝定量、脳血液関門、ヒト腸吸収、発癌性、AMES変異原性、PGPトランスポーター、皮膚感作性、生分解性、蓄積性、hERG阻害)に加え、染色体異常の誘発を予測するモデルを追加した。既存モデルも改良されており、化合物の安全性評価が多方面から行えるようになっているという。

 価格は、予測システムの永久ライセンスが262万5,000円(年間ライセンスは126万円)、予測モデルが同じく63万円(同30万2,400円)、モデル作成システムが同じく525万円(同220万5,000円)。

 一方、ADMEデータベースは、薬物動態分野の著明な研究者であるクロアチアのレンディック博士が文献から収集したヒトの薬物動態関連たん白質および薬物の情報をまとめたデータベースで、主に新薬開発向けにオンラインサービスとして提供されている。1年に4回データが更新されており、今回の最新版はバージョン14に当たる。

 とくに、ヒト、ラット、マウスのデータを中心とした約6,500件のデータを追加し、データ総数が6万件を突破。ヒトと動物の薬物吸収率や代謝の違いがわかるため、動物実験の結果を人間に応用する場合の重要な考察が得られるということだ。

 今回のデータ更新では、主要な代謝酵素であるチトクロームP450 3A4(CYP3A4)や主要なトランスポーターであるP糖たん白(MDR)および有機アニオントランスポーター(OATP)などが中心となっている。

 検索・表示はウェブブラウザーで行え、キーワードを選択するだけの簡易検索のほか、複雑な条件を入力することも可能。薬物とその代謝物に対して、構造式を使って部分構造/類似構造検索を行うこともできる。また、代謝データをもとに副作用を起こす可能性のある薬の組み合わせを調べることもできる。

 利用料金は、全データベースにアクセスする場合、企業および国立研究機関向けが年間157万5,000円、教育機関向けは年間52万5,000円。