NECソフトが科学技術計算専門のASPサービスを開始

自動車・医薬品など新製品開発を支援、ライフ系ではABINIT-MPを提供

 2009.06.24−NECソフトは、自動車や医薬品などの新製品開発をはじめとする産業界のコンピューターシミュレーションを支援するため、科学技術計算専門のASPサービス「HPC OnLine」をスタートさせた。ユーザーはハード・ソフトを社内に設置することなく、データセンターの高速な計算環境を自由に使用することができる。一時的に大規模な計算をしたいなどの計算量の変動にも柔軟に対応することが可能。基本サービスの年間使用料は160万円から(定額)で、今後3年間に50社からの受注と約4億円の売り上げを見込んでいる。

 新サービスのHPC OnLineは、社外のデータセンターに専用の仮想マシンを確保し、それを自由に利用できるというイメージ。NECソフト側から各ユーザーの計算量に合わせた最適な規模を提案するが、「必要なときに必要なだけ使う」という観点から、仮想マシンの大きさは3ヵ月ごとに見直すことができるようにする予定。社内にシステム導入することに比べて、年間で約30%のコスト削減が可能だという。

 サービスは、基本サービスとオプションに分かれており、基本サービスには仮想インフラ(CPU、メモリー、ディスク、OS)の提供に加え、ジョブ管理、ファイル転送、技術サポートが含まれる。ここまでは定額制で、いくら使っても料金は変わらない。リモートログインしてユーザープログラムを流す使い方なら、基本サービスだけでカバーできる。オプションで、プログラムのチューニングや解析支援などのコンサルティングも用意されている。

 HPC OnLineのとくにユニークなところは、仮想マシン上で市販アプリケーションが利用できる点。当面、CAE分野と分子シミュレーション分野をターゲットとしており、CAE関係では線形/非線形解析、構造最適化、流体−構造解析、衝突解析など包括的な機能を持つアルテアエンジニアリングの「HyperWorks」が正式に利用できるほか、さらに数社と交渉中。分子シミュレーションでは、フラグメント分子軌道計算プログラム「ABINIT-MP」に対応している。

 市販ソフトを使用する場合、ユーザーはそれぞれのソフトベンダー(NECソフトが代理店となる場合もある)とライセンス契約を行う必要がある。ただ、通常の年間使用権ではなく、3ヵ月ないし6ヵ月間の特別なライセンスが用意されるという。ABINIT-MPは文部科学省プロジェクトで開発されたソフトだが、NECソフトは正式に商用利用権を取得している。たん白質と薬物との分子間相互作用を量子化学的手法で解析することができる。

 今回のHPC OnLineは、文部科学省の「先端研究施設共用イノベーション創出事業」の成果として事業化が行われており、サービスを提供するデータセンターとしては、国立大学など国有の計算機資源を活用するビジネスモデルとなっている。事業の拡大に合わせて、リソースパートナーとして提携先の大学などを増やしていく。もとは大学などの資源だが、民間開放枠が設けられるため、ユーザー側としてはかなりの程度自由に利用できるということだ。

 現在、いくつかの顧客で商用アプリを含めてトライアル評価に入っており、夏から本格的なサービスを開始する。当初はコマンドラインからの操作になるが、来年度の上半期にはウェブ対応のユーザーインターフェースを追加し、一般の研究者・技術者がブラウザー経由で簡単にジョブを投入できるようにする。

 なお同社では、24日〜26日まで東京ビッグサイトで開催中の「設計・製造ソリューション展」でHPC OnLineのデモを行う。