菱化システムがマルチスケール対応材料設計支援システム

蘭シュルギと代理店契約、メソスケールを網羅する計算エンジン群

 2009.05.26−菱化システムは、オランダのシュルギ社(代表=ヨハネス G.E.M. フライCSO)と代理店契約を結び、材料研究のためのマルチスケールシミュレーションソフトウエア「CULGI」(シュルギ)の販売を開始した。時間的・空間的に幅広いメソスケールを網羅する解析ツールが揃っており、ツール間の連携によってマルチスケールの問題を扱うことも可能。システムは、ライブラリーとGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)から構成されているため、利用するためには若干のプログラミングの知識が必要とされる。価格は年間ライセンスで、1台の使用権が315万円、サイトライセンスは1,050万円。

 シュルギ社のフライCSOは蘭ライデン大学の教授で、動的密度汎関数法(DDFT)ソフト「MesoDyn」の開発者として知られている。2004年にシステムを発展させてシュルギ社を設立したが、これまでは特定のユーザーとの受託研究のスタイルで事業展開してきていた。今回、バージョン4.0の提供を契機に一般向けの販売を本格的に開始するもの。

 具体的な製品構成は、「CULGIライブラリー」と「CULGI GPE」の2つの部分に分かれている。ライブラリーはさらに4つのコンポーネントから構成される。メソスケールに特有のビーズ・スプリングモデルやガウス鎖モデル、全原子モデルといったモデル構造を構築するためのコンポーネント集「Palette」、メソスケール対応の計算エンジンを集めた「Calculators」、データ解析・可視化のためのアニメーション表示やグラフ表示を行う「Graphics」、異なるスケールのモデルをマッピングして連携させる「Mappers」−からなる。すべてC++のクラスライブラリーであり、直接ユーザープログラムに組み込むほか、Tcl(ティクル)やPython(パイソン)などのスクリプト言語から呼び出すことも可能。

 「Calculators」に含まれる計算エンジンは、全原子モデル対応で分子動力学法(MD)とモンテカルロ法(MC)、バネ・ビーズモデル対応で散逸粒子動力学法(DPD)とブラウン動力学法(BD)、ガウス鎖モデル対応で動的密度汎関数法(DDFT)、さらにBDとDPDを組み合わせたハイブリッド法−が揃っている。MesoDynに相当するのはこの中のDDFTプログラムだけであり、計算対象が大きく広がっていることがわかる。

 メソスケール対応のシステムという意味では、経済産業省プロジェクトで開発された「OCTA」と似ているが、計算エンジンの理論背景に相違がみられるほか、ポリマーを対象にした応用が中心のOCTAに対して、CULGIは界面活性剤や生体膜、コロイド、超分子などソフトマターの研究テーマに幅広く対応している。フライ(Johannes Fraaije)CSOが来日して行われた紹介セミナーでは、ポリマー、接着剤、ラポナイト粘土、柔軟剤、ハンドソープ、ドラッグデリバリーシステム(DDS)などの分野の適用事例が示された。

 CULGIでは、これらのライブラリーを直接利用するほか、GUI環境でスクリプト作成ができる「CULGI GPE」も用意されている。マウス操作で簡単にスクリプトを組み立て、最終的にPython形式などでエクスポートすることが可能。計算条件を一部変更したいときなども、GPEから設定パネルをTclファイルとして出力できる。こうしたスクリプト集を共有できるようにしておけば、エンドユーザーはそのスクリプトを起動して手元で簡単に計算を行うことができる。

 シュルギ社では今後、だれにでも扱えるパッケージソフトとしてさらなる完成を目指す方針。現在のCULGI 4.0は計算や解析の専門家が使いやすいシステムになっているが、一般ユーザーを念頭に置いて数年後にはシステムが大きく変わる可能性もあるという。

 なお、ライセンスの詳細だが、すべて年間使用権で、企業向けがシングルライセンス(ノードロック)315万円、サイトライセンス1,050万円、官公庁向けはシングルライセンス210万円、グループライセンス420万円、大学向けはグループライセンスのみで105万円となっている。WindowsおよびLinuxに対応している。