米ケンブリッジソフトが“SaaS”分野で実績

2つのプロジェクトにソフト提供、脊髄性筋萎縮症治療薬開発など

 2009.08.06−ケンブリッジソフトは、インターネット経由でソフトウエアをサービスとして提供する“SaaS”(サービスとしてのソフトウエア)分野で実績を重ねている。米国の難病治療薬開発などのプロジェクトに参加し、ホスティングサービス式でアプリケーションとシステム基盤を提供したもの。IT業界では最近、SaaSやクラウドコンピューティングなど、ネットワーク経由でソフトウエアを利用するビジネスモデルに関心が集まり、ビジネス系の業務システムでは実際の需要も急速に拡大している。同社の取り組みは、CCS分野における先進的な事例として注目される。

 SaaSでは、システムの本体は外部のデータセンターで運用され、アプリケーションの利用者は手元のパソコンからブラウザーベースでそのソフトの機能を利用することになる。このため、ユーザーをスケーラブルに増やすことができ、それにともなう展開も容易。利用者に合わせて見せ方を変えるなど自由度が高く、カスタム化もしやすい。ユーザーにとっては、IT投資を削減できることも魅力となっている。

 システム的には、SOA(サービス指向アーキテクチャー)ベースでシステム統合が自由に行え、仮想化やクラウドコンピューティング環境のもとで堅牢性や信頼性に富んでいるといった特徴がある。

 今回、ケンブリッジソフトが手がけたのは、米国立神経疾患脳卒中研究所(NINDS)と米サイエンス・アプリケーション・インターナショナル・コーポレーション(SAIC)を中心とした脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬開発プロジェクト。候補化合物の構造探索とインビトロでのテスト、薬理活性や毒性などの試験、マウスを使った動物実験など、部門ごとに分かれてコラボレーションした10ほどの企業/組織に対して、化合物登録、バイオアッセイ、分析・レポーティング、在庫管理などをSaaS方式によって提供した。

 登録された化合物は1万5,000件、バイオアッセイは30プロトコル/1,000実験、在庫管理では20ヵ所に分かれた10万コンテナを管理下に置いたという。

 また、もう1つのプロジェクトは、ハンチントン病の治療を目的とした非営利法人である米CHDIファウンデーションに対するもの。こちらは参加した企業/組織は約100で、登録された化合物は20万件、バイオアッセイは20プロトコル/1,000実験、レポートツールは全研究員が使用したという。化合物登録に際しては、特別なルールを組み込んだスクリプトを実行できるようにした。さらにこのプロジェクトでは、MDL製のシステムからのデータコンバートもともなっていたということだ。

 サービス提供のためのデータセンターは当初は社内に置いていたが、システム運用が拡大したため、最終的には外部の専門業者に委託したという。いずれにしても、SaaSを事業化するための経験を一定に蓄積したことは間違いないだろう。