加ACD/Labsのファーマアルゴリズム買収で国内代理店が新販売体制

富士通とインフォコムが分野別にすみ分け、物性予測製品群さらに強化へ

 2009.11.10−NMR(核磁気共鳴)やMass(質量分析)などの分析分野のデータ管理・解析ソリューションで実績豊富なカナダのアドバンスドケミストリーデベロップメント(ACD/Labs)が、化合物の物性予測ソフトを開発している加ファーマアルゴリズムを買収したことにともなう日本国内での販売体制がこのほど固まった。ACD/Labsの代理店である富士通と、ファーマアルゴリズムの代理店であるインフォコムが製品群を分割して扱うことになる。国内の両社はこれを機に協調関係を築いていくことにしている。

 今回の新体制は、11月4日と5日に富士通とインフォコムの共催のかたちで開催された「ACD/Labs日本ユーザー会」の席上で正式に明らかにされたもの。

 ACD/Labsがファーマアルゴリズムを買収したのは今年2月。ファーマアルゴリズムはもともとACD/Labsからスピンアウトしたベンダーで、設立が1999年。統計解析によって物性予測モデルを構築するためのツールを製品化することでスタートしたが、現在ではあらかじめ予測モデルを組み込んだ予測システムをパッケージとして販売している。インフォコムはファーマアルゴリズム製品を2003年から販売してきた。

 ACD/Labsは、ファーマアルゴリズムを統合したことにより、分析データ管理関係、化学命名法関係、物性予測関係−の3分野の製品体系を確立。ACD/Labs自身も物性予測関係の製品をいくらか持っていたが、それらの開発体制は旧ファーマアルゴリズムの開発陣と統合し、さらなる強化を図る。これにともない、日本での販売・サポート体制は、分析データ管理関係と化学命名法関係を富士通が、物性予測関係をインフォコムが担当することになる。ただし、物性予測関係でも、富士通の既存ユーザーについては富士通がそのままサポートを続ける。

 新生ACD/Labsの物性関係製品を具体的にあげると、旧ファーマアルゴリズム製品では薬物候補化合物の薬物動態特性を予測する「ACD/ADME Suite」(旧名称はADME Boxes)、毒性予測の「ACD/Tox Suite」(同Tox Boxes)、ジメチルスルホキシド(DMSO)への溶解度を予測する「ACD/DMSO Solubility」(旧DMSO Solubility)、旧ACD/Labs製品として基本物性の予測を行う「ACD/PhysChem Suite」、欲しい物性を満たす構造を提案してくれる「ACD/Structure Design Suite」−というラインアップ。

 それぞれ予測できる項目としては、ACD/ADME Suiteがヒト経口生物学的利用率、P糖たん白(P-gp)阻害活性と基質、溶解度、ヒト腸管透過性、血漿たん白結合率、pKaとLogD、アブラハム溶媒和パラメーター、LogPやTPSAなどの基本物性、血液脳関門透過率、最大推奨1日投与量、CYP3A4阻害・基質・部位選択性など、ACD/Tox Suiteは遺伝毒性、健康影響、急性毒性、内分泌かく乱、刺激性、水生毒性、hERG阻害など。またACD/PhysChem Suiteは沸点、LogD、LogP、pKa、シグマ、水溶解度などの基本物性を予測できる。

 現時点では既存製品を寄せ集めたかたちだが、ACD/Labsでは来年の秋を目標に製品の統合化を進める計画。GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)などの基本的な部分はファーマアルゴリズム製品がベースになるようで、すでにACD/ADME Suiteの中からACD/PhysChem Suiteの予測機能を呼び出すことが可能。予測を実行する際にどちらのアルゴリズムを使用するかを選択できるようになっている。統合版の新GUIは11月にもリリースされ、来年春、来年秋と段階的に機能の統合と移行を進めていく。予測モデルやアルゴリズムの統合も来年の秋には完了する予定である。