インフォコムがシュレーディンガー社のケムインフォ新製品

化合物情報管理で多彩な機能、連携・組み込みなど柔軟な活用

 2009.11.07−インフォコムは、ケムインフォマティクス領域のソリューションを強化し、米シュレーディンガー社が開発した新製品「Canvas」の提供を本格的に開始した。シュレーディンガー製品群は、ドッキングシミュレーションなどストラクチャーベースドラッグデザイン(SBDD)分野で評価が高いが、今回のCanvasはファーマコフォアモデルの作成と3D-QSARのための「Phase」に続くリガンドベースドラッグデザイン(LBDD)分野の新製品に当たる。化学構造を含む化合物情報を統合的に管理・解析するためのツールが揃っており、分子の特性やフィンガープリント計算、類似性検索、ダイバーシティー解析、多変量解析などが可能。他のプログラムとの連携・組み込みなど、多様な使い方に対応できることも特徴となっている。

 Canvasは、国内で今年8月にリリースされたシュレーディンガーのスイート製品群の最新バージョンにベータ版として含まれていた製品で、2日にリリースされたアップデート版(2009年版アップデート2)で正式版に格上げされた。

 カスタマイズ性に富んでいることが特徴で、WindowsとLinuxの両方のプラットホームに対応し、すべてのプログラムをコマンドラインから利用することが可能。また、主要機能は自由に呼び出せるPythonスクリプトとしてあらかじめ用意されているほか、ワークフローツールのKNIMEノードとしても提供される。

 さらに、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)環境も完備しており、化学スプレッドシート形式の専用GUIに加えて、シュレーディンガー製品に共通のGUIソフト「Maestro」とも統合されている。Maestroのメニューから他のPythonスクリプトと連携させることも簡単に行えるため、ユーザーの目的に合わせたさまざまな使い方が可能となっている。

 具体的には、プロジェクト単位でデータベースを構築して、情報の管理や解析を行う。大量のデータを軽快に取り扱うことができ、例えば100万件の構造をSMILES形式で読み込むのに数分しかかからない。専用GUIの化学スプレッドシートを使うと、取り込んだライブラリーに対してフィンガープリント計算や物性計算を行ってデータを並べ替えるなどの作業を簡単に行うことが可能。

 また、化合物の類似性や多様性の解析、クラスター分析も容易。QSAR(構造活性相関)のモデル化手法としては、線形回帰分析、主成分分析(PCR)、パーシャルリーストスクエア(PLS)、ベイズ回帰、ニューラルネットワーク、自己組織化マップに対応している。

 今回、Canvasが正式にリリースされることにより、Phaseと合わせてシュレーディンガーのLBDDソリューションが強化されることになる。それと同時に、インフォコムとしても米ケムアクソンのケミストリーエンジンを利用した独自の化合物情報管理パッケージ「J-STRIKE」、ケムアクソンのツールをKNIMEノードとして提供する「JChemエクステンションズ」、先ごろ販売権を取得した英ドットマティクス製品群など、ケムインフォマティクス領域のソリューションを拡張してきている。今回のCanvasもその一貫として位置づけることができるだろう。