米エヌビディアがGPU利用の生命科学研究向けソリューション製品
TeslaにCUDA対応アプリを搭載、計算速度数十倍に
2010.02.23−米エヌビディアは、ライフサイエンス研究でGPUコンピューティングを活用するための新しいソリューションとして「Tesla BioWorkbench」を製品化した。GPUで科学技術計算を行うためのアーキテクチャーである“CUDA”に最適化された分子動力学法などのアプリケーションを利用することができ、数十倍の高速処理が可能。わずかな投資でスーパーコンピューター並みの性能を引き出せることから、バーチャルな実験室として注目を集めそうだ。
「Tesla BioWorkbench」は、GPUコンピューティング専用システムである「Tesla」にCUDA対応アプリケーションを組み合わせたソリューション。Tesla自体は、PCワークステーションのPCI-Expressスロットに装着して使用するシングルGPU搭載カードタイプ(カード上に最大6GBのメモリーを搭載)の「Cシリーズ」と、ラックマウント型の1Uシステム製品で4個のGPUと最大24GBのメモリーを搭載した「Sシリーズ」に分かれている。価格はカードタイプが2,499ドルから、1Uタイプが1万2,995ドルからとなっている。
ハードウエアは通常のTeslaだが、アプリケーションはCUDAに対応していることが確認され、エヌビディアのラボで最適化したプログラムが提供される。
具体的には、計算化学系の分子動力学法(MD)ソフトで「AMBER」と「GROMACS」、「LAMMPS」、「NAMD」、「HOOMD」、「ACE MD」(近日提供開始)、「GROMOS」(近日提供開始)、量子化学ベースの分子モデリングソフト「TeraChem」、密度汎関数法の「BigDFT」(近日提供開始)、分子グラフィックスソフト「VMD」、バイオインフォマティクス系ではスミス−ウォーターマン法のホモロジー検索ソフト「CUDASW++」、アミノ酸配列解析ソフト「GPU-HMMER」、遺伝子配列アラインメントソフト「MUMmerGPU」が利用できる。
これらのアプリケーションはダウンロードしてシステムに導入することができるほか、最新のベンチマークデータ、関連文献、チュートリアルを利用することも可能。フォーラムなどのコミュニティサイトに参加してさらに情報を得ることもできる。
実際の活用事例としては、「セルロースの加水分解酵素に対するAMBERシミュレーションで、シングルGPUで10ノードのクラスターに匹敵する性能が得られた」(カリフォルニア大学サンディエゴ校)、「NAMDを使った新型インフルエンザウイルス(H1N1型)と薬分子との相互作用解析で、4GPU搭載ワークステーションが16CPUサーバーを上回る性能を発揮」(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)、「GROMACSによる薬と膜たん白質との結合シミュレーションで、GPU1台でCPUの4−5倍の速度が出た」(ストックホルム大学)、「酵素反応メカニズムのグラフィカルな解析のために、NAMDとVMDの組み合わせで30日かかる計算が1日で終了した」(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)−といった事例があるという。