米オープンアイ:アンソニー・ニコルズ社長兼CEOインタビュー
2010年対日投資を加速、東京にオフィス・人員も拡大
2010.02.06−創薬支援のためのユニークな研究ツールを提供している米オープンアイ・サイエンティフィック・ソフトウエアは、2008年10月の日本法人設立に続き、2010年は東京オフィスの開設、日本人スタッフ増員、初のオープンフォーラム開催と、日本市場への投資をさらに加速させる。「欧米と同様に、日本の顧客との長期的な関係を築きたい」とするアンソニー・ニコルズ(Anthony Nicholls)社長兼CEOに今後の戦略を聞いた。
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− オープンアイ社の設立は1997年ということですが・・・
「コロンビア大学時代から続けていた製薬産業向けの実用的なソフト開発をもっと推進したいという思いがあり、友人の勧めで起業した。とくに、分子の形状と静電ポテンシャルの類似性を用いて新しい化合物の発見や分子設計に役立てる技術は将来的にも有望だと感じたし、実際にそれを製品化したROCSおよびEONはいまも当社の主力製品だ。アストラゼネカなどの大手製薬会社に友人がおり、設立当初からソフト開発面で協力してくれた。実際のユーザーニーズを直接反映できたことが、実用的なソフト開発に結びついた。良い友人との出会いが現在の成功につながったと思っている」
− 最初は代理店経由で日本市場に進出しましたが、2008年10月に日本法人を設立し、米国からの直接販売・直接サポートの体制に切り替えました。この狙いは?
「われわれ独自の理念ややり方をダイレクトに反映させるためだ。オープンアイは正直さをモットーにしており、製品の価格もはっきりとホームページに公開している。使用するCPUの数がいくつでも、OSが何であっても、すべて同じ価格だ。世界中、どこのユーザーにも同じ価格(ドル建て)で提供する」
− 最近の業績はいかがですか。
「経済情勢としては深刻な景気後退の中だったが、2009年はオープンアイにとってベストの1年になった。設立以来最高の売り上げを記録したし、この1年で社員を7人増やして30人の体制に強化した。いわゆる“ティッピングポイント”(Tipping Point)というか、ちょうどブレイクする瞬間を迎えたのだと思う」
− 製品が優れていることも大きな要素ですね。
「製品の優秀さに加えて顧客との関係が重要だ。われわれにとっては両者は不可分の関係にある。例えばX線結晶構造解析を支援するAFITTというソフトがあるが、顧客からは“それまでたいへんだった作業が簡単にできるようになり、人生が変わるくらいのインパクトがあった。まさにアメージングなソフトだ”という反響をいただいている。顧客との良い関係があるからこそ、このように実際に役立つソフトに仕上げることができる」
− 今年の対日戦略について教えてください。
「日本法人の陣容を大幅に強化する。(現在の本社は奈良だが)4月に東京オフィスを開設する。人員は、社長の大江武弘に加えて、今年から勝山マリコ(もと富士通)が事業部長として加わった。さらにアプリケーションサイエンティストの採用を予定しており、少なくとも4人以上の体制で業務を充実させたい。東京オフィスではトレーニングも行えるようにし、顧客との交流の拠点にしたいと考えている」
− 日本で行う予定のオープンフォーラムについては?
「“CUP”と題して行っており、米国では今年で11年目、欧州では4年目になる。これを日本でも開催したい。日程は7月1日と2日の2日間だ。これは、われわれが製品の話しをする場ではなく、科学的に興味深い話題を取り上げたオープンな集まりだ。世界的に著明な研究者(*)の講演を聞いたり、くつろいだ雰囲気でディスカッションしたりすることができる。日本の研究者やこの分野の技術に関心を持つ人たちにとって有益なイベントになると確信している。ぜひ成功させたい」
− 最後に日本市場へのメッセージをお願いします。
「オープンアイ製品は、大きくアプリケーションとツールキットに分かれているが、そのアプリケーションもすべてツールキットで開発されている。顧客自身がツールキットを使って自分用のアプリケーションを開発する例もあり、驚くほど簡単に問題解決が図れたという声も多い。日本法人の強化でツールキットに関するサポート力も向上する。創薬研究で悩みがあれば、まずは何でも相談してみてほしい」
− ありがとうございました。
(*)現時点で、以下の講演者の来日が予定されている。Paul Charifson (VRTX)、Jurgen Bajorath (University of Bonn)、Andrew Grant (AstraZeneca)、Martha S Head (GSK)、Andy Jennings (TSD)