ビヨンド・コンピューティングがMolWorks3.0を無償でリリース

追加機能を有償プラグインとしてシリーズ化、クラウドサービスも視野に

 2010.9.25−ビヨンド・コンピューティングは、国産分子設計支援ソフト「MolWorks」の最新バージョン3.0を開発し、正式にリリースした。ユーザー登録を行うことで誰でも無償でダウンロードできる。分子モデルの組み立て、計算化学プログラムの実行、計算結果の解析まで一通りの機能を持つが、とくに構造式から分子の物性を推算する機能の評価が高い。基本的な機能を無償とする一方で、追加機能を有償プラグインとして提供し、事業化を図る計画。3次元グラフィック機能をその第1弾とし、年末までにリリースする予定にしている。

 MolWorksは2000年に開発された国産CCS(コンピューターケミストリーシステム)パッケージで、2002年のバージョン1.7から無償になっている。現行のバージョン2は約2万本がダウンロードされたが、大半が海外からのアクセスだったという。

 今回のバージョン3.0開発に当たって、同社は中小企業庁が実施している「異分野連携新事業分野開拓」(新連携)プログラムを活用した。プロジェクトは3社協業で、同社がソフト開発を担当、ファルマデザインが創薬支援のための技術ノウハウを提供し、ヒューリンクスが製品を販売するという体制になっている。現在は2年目に入っており、3年間でシステム化構想の達成を目指す。

 この目標は“モレキュラーマイニング”と呼ばれる。現在の計算化学は、設計した分子の特性を解析・予測するものだが、逆にモレキュラーマイニングは望ましい物性を有する候補化合物を自動的にリストアップすることができるため、新薬などの開発期間を大きく短縮する効果が期待されるという。

 さて、今回のバージョン3.0だが、前バージョンに比べて画面構成を新しくし、タブでのウィンドウの切り替え、アイコンやボタンでの操作など、現代的な使いやすさを備えたソフトに生まれ変わった。モデリングの際の分子描画の強化、Zマトリックス編集機能のサポート、さらにGaussian、GAMESS、MOPACの出力ファイルを解析する機能も追加された。手軽に分子軌道計算を体験できるように、MOPAC6もバンドルされている。

 物性推算機能自体は大きく変わっていないが、今回からワークシート形式で複数分子の物性推算を一気に行うことができるようになったため、実用性は大幅に向上している。

 開発中の有償プラグインについては、第1弾が年内にもリリースされる予定。GaussianやMOPACの計算結果を3次元グラフィックで解析できるようにするもので、テンキューブ研究所の協力で開発を進めている。第2弾以降では、ニューラルネットワークなどの新しい物性推算手法の導入、利用者が自分で推算式・予測式を構築するためのツールの提供などを予定している。

 また、ネットワーク経由でMolWorksから計算化学プログラムを利用できるクラウドサービスを、来年早々にも開始したい考え。豊富な計算機資源を用意できない中小企業のユーザーでも、最先端の計算化学シミュレーションの恩恵を享受できるようにするということだ。こちらはヒューリンクスと協力して行う。

 同社は、8月末にボストンで開かれた米国化学会に出展し、最新版3.0を会場で配布した。12月にはハワイで行われるPacifichemにも展示する。バージョン2は海外ユーザーが多いだけに、3.0でも海外市場に期待したいという。国内では、10月22日から開かれる日本コンピュータ化学会でもMolWorks3.0を目にすることができる。


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