NIMSが物質・材料データベース「MatNavi」を全面リニューアル

高分子・無機・金属材料を網羅、使い勝手大幅に向上

 2010.07.14−独立行政法人 物質・材料研究機構(NIMS)は、高分子・結晶基礎・超伝導材料・構造材料など13種類のデータベース(DB)で構成されるDBサービス「MatNavi」を7月1日から全面リニューアルし、公開開始した。主要DBを再構成し、高分子材料「PoLyInfo」、無機材料「AtomWork」、金属材料「Kinzoku」の3領域を確立させたほか、シングルサインオンを実現し、再ログインなしで全DBを自由に利用できるようにするなど、使い勝手も大幅に向上している。今後はオンラインでのサービスだけでなく、登録されているデータを企業などにライセンス提供する事業にも進出していく。MatNaviは海外からの注目も高く、日本を代表する物質・材料DBサービスとしてさらなる発展が期待される。

 MatNavi(http://mits.nims.go.jp)は、NIMSのデータベースステーション(山崎政義ステーション長)が2003年4月から公開を始めたサービスで、過去のプロジェクト(構造材料データシートプロジェクト、原子力基盤材料データフリーウェイプロジェクト、超伝導材料マルチコアプロジェクト、高機能材料データベース開発プロジェクトなど)の成果を継承したもの。NIMSの研究グループが取得した実験データや、国内外の学術文献から情報収集してデータ更新を行ってるほか、界面熱抵抗DBや熱物性予測システムなど、新しいシステム開発も進めてきた。

 今年6月末現在の登録ユーザー数は5万1,985人で、141ヵ国/1万6,730機関から利用されている。新材料の開発および機器設計における最適材料選択のための標準参照データとして、また大学・大学院での論文執筆において利用されることが多いという。

 今回のリニューアルは、老朽化したサーバーの更新にともなうもの。13台あったサーバーを3台にサーバー統合するとともに、オープンシステム(Linux、PostgreSQL、Javaなど)を全面的に採用。維持管理費の低減を図りながらユーザビリティを大きく向上させた。とくに、シングルサインオンを採用したことが大きな変更点で、1つのIDだけで全システムを利用することができる。IDはメールアドレスとなり、パスワードを忘れてもメールアドレス入力で即時再発行されるため、パスワードを覚えておく必要もなくなった。

 さて、肝心の中身だが、全DBに愛称が付いて親しみやすくなった。とくに、結晶基礎DBは「AtomWork」と命名され、多元系の結晶構造、状態図データ、XRDおよび特性データを拡張、約8万6,000件のデータを収録した無機材料DBとして生まれ変わった。結晶DBは海外にもいくつかあるが、結晶構造と状態図、X線回折データ、プロパティの4つを相互リンクさせたのはAtomWorkだけだという。

 また、圧力容器材料DBと基盤原子力材料DBを統合し、構造材料データシートに収録されていた引張特性、クリープ特性、クリープ破断特性、疲労特性の各データも1つにまとめて、金属材料DB「Kinzoku」として再構築した。鉄鋼材料を中心に、アルミニウム合金、チタンおよびチタン合金も含め、500材種、3,500ヒートの約8万2,700件のデータを収録している。この分野は以前から日本語化の要望が強かったため、今回は英語/日本語のバイリンガルが実現し、検索画面からデータ参照まですべて日本語で利用することができる。

 現在、すべてのDBについて文化庁に著作権登録の申請を行っており、そのあとに中身のデジタルデータを民間企業にライセンス提供する準備も進めている。オンラインで検索するだけでなく、データを社内で活用したいという要望は海外からもあるため、以前から連携している英グランタデザイン(欧州の統合材料DBであるMatdata.netを運営している企業)をパートナーに起用する方向で話し合いを持っているということだ。

 MatNaviは、NIMSへの運営費交付金の中から毎年1〜1.5億円を充てて維持されているサービス。DBは構築されるだけでなく、更新し続けることが何よりも重要であり、その意味でNIMSデータベースステーションの継続的な活動に大きな期待がかかる。


ニュースファイルのトップに戻る