マイクロソフトの技術者会議「Tech・Ed 2010」基調講演

クラウド化が急ピッチで進展、新技術続々と投入

 2010.09.02−マイクロソフトは、8月25日から27日までパシフィコ横浜で恒例の技術者会議「Tech・Ed 2010」を開催した。今回は「次世代クラウドの神髄がここに」をテーマに、テクニカルセッションやハンズオンを含めて約140のプログラムで構成される盛り沢山な内容となった。初日午前中の基調講演には、「現実解としてのクラウドを支える最新テクノロジー」と題して、同社執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏が登壇し、クラウドコンピューティングがすでに現実のものとして普及しはじめていることを強調。合わせて来年以降に登場するいくつの新技術を披露した。

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 大場執行役は講演の前半パートで、マイクロソフトの技術やサービスを利用したクラウドの事例を紹介した。まずは、クラウドOSである「WindowsAzure」とリッチなウェブ体験を提供する「Silverlight」を組み合わせたオープニングデモを実施。米国でDVDの宅配・ネット配信を行っているNetflix社のサイトにつなぎ、DVDタイトルをビジュアルに検索する実演などを行った。(動画1参照)

 次に、マイクロソフトのクラウドサービスの事例として、BPOS(ビジネス・プロダクティビティ・オンライン・スイート)で、すでに世界で4,000万人、日本で25万人以上のユーザーへの導入実績があること、パートナー数も400社を超えたことを明らかにした。これは、電子メールや会議室予約の機能を持つ ExchangeServer(エクスチェンジサーバー)相当の「ExchangeOnline」(エクスチェンジオンライン)、ファイル共有やポータル機能を持つ Office SharePoint Server(オフィスシェアポイントサーバー)相当の「SharePoint Online」(シェアポイントオンライン)など4つのサービスで構成されるSaaS型コラボレーションソリューションで、数万ユーザーの利用に耐えるスケーラビリティや携帯電話などのデバイスとの親和性を武器に実績を伸ばしているという。講演の中では、実際にWindowsAzureとExchangeOnlineを組み合わせてセキュアなコラボレーション環境を構築しているバンテック社の事例が紹介された。

 一方、WindowsAzureを利用したビジネスを行っているベンダーの代表例として、ブルーオーシャンシステムズの介護事業者向けサービス「BlueOcean」、企業と金融機関との金融取引を支援する日本電子計算の「CP Communicator」が取り上げられた。金融業など情報のセキュリティに気を使う企業では、扱うデータの種類によってクラウドとオンプレミスを自由に切り替えられるAzureの利点が大きなポイントだったという。Azure上で稼働するアプリケーション数はすでに5,000を超えており、これは米国に次いで2番目の実績となっている。

 また、同社では、クラウドを実装する際の多様なユーザーニーズに対応するため、従来型のオンプレミス環境、マイクロソフトが提供するパブリッククラウドに加えて、マイクロソフトのパートナー企業が用意するパートナークラウドを新たな選択肢として整備中。データセンター/サービス事業者向けのライセンスを準備しているほか、データセンター向けにAzureアプライアンス製品の開発も行っている。

 講演の中では、パブリッククラウドの事例として、NTTコミュニケーションズが提供する「Bizホスティングエンタープライズ」が紹介された。用途に応じてパブリッククラウドとパートナークラウドを選択できる柔軟性、既存のオンプレミス環境やアプリケーション資産との接続性、将来に向けた技術的整合性が取れていることなどが特徴となる。

 また、富士通との協業関係も構築されており、Azureアプライアンス製品を共同開発していること、富士通のデータセンターからAzureベースのサービスがグローバルに提供される計画があることなどが説明された。

 基調講演の前半パートの締めくくりとして、大場執行役は「クラウドの普及は予想を上回るペースで進んでいる。もはや、オンプレミスかクラウドかの二者択一を考えるのではなく、ハイブリッド型で推進する時代に入った」とまとめた。

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 基調講演の後半パートは、同社が2011年以降に実現を予定している新技術の紹介とデモンストレーションが中心。具体的には、データ配信サービス業者のためのマーケットプレース“Dallas”(コードネーム)、WindowsAzureのHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)用途への展開、さらに高速化される新型ブラウザー「Internet Explorer 9」(インターネットエクスプローラー9)、Azureと緊密に連携する次世代モバイルOS「WindowsPhone 7」、コードレスでビジネスアプリケーション開発が行える「VisualStudio LightSwitch」が紹介された。デモの多くは本邦初公開のものだった。

 とくに、Dallasは、コンテンツプロバイダー向けのマーケットプレースサービスで、課金やアカウント管理の仕組みを合わせて統合したもの。現在、テクノロジープレビュー版が提供されており、米国政府や国連、NASA(米航空宇宙局)などがテスト使用中だという。デモでは、NASAのサービスなどが示された。(動画2参照)

 また、Internet Explorer 9(IE9)の実演も目を引いた。新しいJavaスクリプトエンジン“Chakra”を内蔵し、GPU(グラフィックプロセッサー)によるアクセラレーション機能を搭載している。熱帯魚のグラフィックをブラウザー上に表示させるデモでは、他社のブラウザーに比べて、100匹を表示してもIE9の描画速度はほとんど落ちなかった。IE9は9月16日に最初のベータ版がリリースされる予定となっている。(動画3参照)

<動画1>

<動画2>

<動画3>


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