菱化システムが粉末X線結晶構造解析ソフトを製品化

複雑な分子や共結晶でも短時間で構造決定、MOEとの統合で高い操作性

 2010.10.02−菱化システムは1日、名古屋大学で開発された画期的なX線結晶構造解析プログラムをもとに、商用版を「Crystal Profiler」の名称で製品化し、販売開始したと発表した。従来のソフトでは対応困難だった原子数が100を超える大きな有機化合物や共結晶の構造でも、短時間で決定できることが特徴。大型放射光施設SPring-8で測定されたX線回折データに基づく検討を通し、複雑な医薬品の結晶構造決定に成功した研究事例があり、海外からも注目を集めている。

 物質の結晶構造は、その単結晶のX線回折データをもとに決定できるが、最近では十分な大きさの単結晶を得ることが難しい場合が多く、粉末の試料から構造決定する技術へのニーズが拡大している。ただ、粉末X線回折データは情報量が少ないため、シミュレーションで仮想的な結晶構造を多数つくりだし、それと実験データとを比較しながら正しい構造を探索するという手法がとられている。ところが、現在の新薬や新材料の分子構造が複雑化してきているため、シミュレーションする組み合わせのパターンが膨大になってしまい、正解を得るのが難しいという問題があった。

 今回の「Crystal Profiler」は、このような複雑な問題の探索手法として利用される遺伝的アルゴリズムに独自の改善を組み込んだもので、その威力はすでにSPring-8を活用した研究事例などで実証されてきているという。とくに、同社が販売権を持つ加CCGの統合計算化学システム「MOE」のアドオンソフトウエアとして製品化されているため、グラフィック環境で使いやすいことも特徴の1つとなっている。

 今後は、単独で利用できるスタンドアロン版の開発も進め、さらにユーザー層を広げていきたいとしている。


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