アクセルリスが「Discovery Studio」の最新版3.0をリリース

抗体医薬モデリング機能を強化、操作系・グラフィックスも一新

 2011.03.02−アクセルリスは、生命科学向け統合分子モデリングシステム「Discovery Studio」(ディスカバリースタジオ)の最新版3.0をこのほど出荷開始した。300以上の新機能を搭載しているが、とくに抗体医薬の設計など生物製剤分野に対応した機能が重点的に強化された。また、プラットホーム製品の「Pipeline Pilot」(パイプラインパイロット)に完全対応しており、豊富な外部ツールとの連携も容易。操作系も一新され、作業性・生産性も大きく向上しているという。

 Discovery Studio 3.0(DS3.0)は、計算化学者と計算生物学者のための包括的なモデリング/シミュレーションソフトウエアで、低分子医薬品から生物学的医薬品まで幅広くカバーする豊富な機能を搭載している。抗体医薬などは通常の低分子薬に比べて分子量が2ケタ以上大きくなるため、分子モデルの取り扱いにかかるストレスも格段に大きい。DS3.0では、基本的な機能として巨大分子の読み込みや表示のパフォーマンスを改善しているため、複数のたん白質分子でもストレスなく扱うことが可能。ファイルの読み込み・書き込み速度は2倍、表面描画速度は60倍、グラフィックのレンダリング能力も、サーフェスモデルで6倍、CPKモデルで30倍、スティックモデルで60倍、リボン表示で20倍といった具合に強化された。

 新しくなったGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)は、プロトコルとツールパネルを一体化した“ツールセットバー”を用いたわかりやすい操作方法が特徴。直観的に操作でき、少ないクリック回数で以前と同じ仕事をさせることができる。いちど慣れれば、生産性は非常に高い。

 モデリングおよびシミュレーションの機能面では、とくに抗体医薬を対象にした機能が強化された。軽鎖と重鎖でそれぞれ異なるテンプレートを用い、2つの鎖の相対的な空間配置を決める任意のテンプレート構造と重ね合わせて、抗体フレームワーク構造のホモロジーモデリングを行うことができるほか、大手製薬会社との共同開発によりIgG1とIgG2をテンプレートとして免疫グロブリンG抗体の全長モデリングを行う機能も搭載されている。変異の導入による抗原の結合親和性への影響を予測したり、たん白質の安定性への影響を評価したりすることも可能。

 また、ファーマコフォア関連のツールも機能強化されており、遺伝的アルゴリズム(GFA)モデルを用いたファーマコフォアの自動生成ができるようになった。リガンド側の情報しかない場合でも、選択性の高いファーマコフォアモデルを探索することができる。たん白質との複合体の情報があれば、その相互作用をもとにファーマコフォアを自動的に発生させ、選択性によってスコアリングしてくれる。フランス国立科学研究センター(CNRS)との共同研究で実現した機能だという。さらに、活性リガンドの重ね合わせに基づき新たなリガンド構造を提案する“BREED法”も組み込まれている。

 今回のDS3.0は、エンタープライズ版Pipeline Pilotのクライアントとして動作するため、Pipeline Pilotを介して外部プログラムとの連携も容易。ユーザーが自分で計算・解析のプロトコルを作成したり組み替えたり、サードパーティーソフトを組み込んだりすることも自由に行える。また、3D-QSARなどの機能を呼び出すことも可能で、創薬研究を大幅に効率化させることが可能になった。

 社内にPipeline Pilotのサーバーを立てておけば、ウェブポート機能を利用して一般のPCからもDS3.0の機能を利用することもできる。実験科学者が手元のPCで気軽に物性予測を行うといった使い方が可能だという


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