富士通九州システムズが薬物相互作用予測ソフトを拡販へ

セミナー・体験実習を開催、血中濃度の変化など定量的に予測

 2011.02.15―富士通九州システムズ(FJQS)は、8日に都内で薬物相互作用予測ソフトウエア「DDI Simulator」(DDIシミュレーター)に関するセミナーおよび体験実習会を開催した。監修者として開発に携わった東京大学大学院薬学系研究科の杉山雄一教授を招いて、ソフトを支える基本的な理論や考え方を解説するとともに、実際にPCを用いて一連の機能を実際に操作しながら体験できるようにした。当日は55名ほどの参加があり、会場は熱気に包まれた。同製品は発売後ちょうど1年になるが、今回のイベントを機にあらためて自社製品として販売を強化する。

 「DDI Simulator」は、薬物の併用投与時の相互作用を予測するソフトで、体内動態パラメーターの情報を用いた生理学的モデルのシミュレーションを行う。薬物同士の相互作用は副作用を増大させる場合があり、実際に1999年から2003年の間に米国で安全性の問題によって市場から姿を消した薬物の半数がこの問題に関連していたという。このため、新薬の開発過程で自社の化合物を阻害薬と被相互作用薬の両面で評価することや、既存の医薬品との併用における相互作用を評価しておくことが重要になっている。とくに、治療域の狭い候補化合物ではこの点の検討が必要不可欠だということだ。

 「DDI Simulator」自体は、NPO法人であるHAB研究機構の薬物相互作用データベースの開発成果をもとに、機能を追加しユーザーインターフェースを充実させてパッケージ化した製品。正確な定量的予測を行うためのシミュレーターとして、生理学的薬物動態(PBPK)モデル、競合阻害(MBI)モデルが搭載されており、小腸代謝阻害の補正を加えることも可能。MBIモデルでは、阻害薬が自身の代謝を阻害する効果も考慮できるので、より正確な予測結果が得られるという。

 シミュレーションのもとになるデータベースには、米食品医薬品局(FDA)が推奨する薬物間相互作用確認用薬物を中心に37種類の薬物についてのPKパラメーターやin vivo Ki値のデータを収録。さらに、実験データからパラメーターを算出する機能も備えており、新しいデータを登録したり編集したりすることも容易に行える。

 基本的な操作は、シミュレーションモデルを選択し、薬物の組み合わせを指定したあと、併用する2種類の薬物のそれぞれの投与量や回数、日数などの投与方法を設計して、シミュレーションを実行させる。最高血中濃度(Cmax)や薬物血中濃度−時間曲線下面積(AUC)などの上昇率が得られるので、これらの定量的データをもとに考察を行うことができる。

 当日の体験実習では、非臨床部門(自社化合物が阻害薬として阻害を起こすかどうかの検討)および臨床部門(薬物間相互作用の影響を少なくするための薬物の検討および投与設計の最適化)での利用シナリオをもとに、実際にソフトを操作することができた。

 「DDI Simulator」の現在のバージョンは1.0だが、将来のバージョンアップ計画も少し説明された。それによると、シミュレーションモデルとしてトランスポーター阻害モデルの追加、パラメーターデータベースの拡充、静脈内投与など投与設計機能の強化―などが予定されているようだ。


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