菱化システムが英IDBSの電子実験ノートを発売

自由度高く生産性向上、化学・材料研究分野にも浸透図る

 2011.05.10−菱化システムは、英IDビジネスソリューションズ(IDBS)の電子実験ノートブック(ELN)製品の国内販売を今年度から正式に開始した。「E-WorkBook Suite」の商品名で、ELNが普及している医薬分野だけでなく、化学・材料分野にも浸透を図る。自由度が高いため特定の研究開発分野に限定されずに使用でき、紙の実験ノートよりも個人の生産性が高まると同時に、全社的な情報共有・知財戦略を推進できる利点があるという。

 菱化システムは、2009年7月にIDBS社に買収された英インフォセンスのワークフロー/データマイニング製品をそれ以前から販売しているため、IDBS社との取引関係はあったがELN製品は扱っていなかった。今回の契約により、現時点では、IDBSのELN製品は、医薬市場に特化した従来からの代理店であるCTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)と、医薬以外の市場にも展開する菱化システムの2社から提供されることになる。

 さて、「E-WorkBook Suite」は、基本機能を搭載したプラットホーム製品の「E-WorkBook」、創薬研究・新薬開発向けのアプリケーションである「BioBook」、化学研究向けの機能が強化された「ChemBook」の3製品から構成される。複雑で大量の研究データへのアクセス性、知識・知見の共有化、データの再利用性などをエンタープライズレベルで飛躍的に高めることができ、結果として業務効率や生産性の向上を図ることが可能。

 ELNは、もともと先発明主義を採用する米国などで発展したシステムで、製薬企業が主なユーザーであり、創薬の合成実験を皮切りに、生物、製剤、分析などの研究部門、さらには安全性・臨床などの開発段階を包含した研究データプラットホームとして市場を伸ばしてきた。

 ただ、同様の化学物質を研究対象としながら、化学や材料メーカーではELN普及が遅れているのが現状。使用される実験装置もさまざまで、生データや画像、グラフ/チャートといった幅広い形式の情報が扱われるなど、実験ノートのスタイルが定型化されておらず、自由に書き込める紙のノートの方が作業性が良いという事情があった。

 これに対し、「E-WorkBook Suite」は自由度の高さが特徴になるという。作図ツールも高機能で、単位構造の繰り返しで記述するなど高分子化合物特有の表記法にも対応しているため、紙のノートよりも使いやすいと評価されている。画像やチャート、コメントも自由に貼り付けることができ、そのすべてをデータベース化して全文検索の対象にすることができる。

 管理者や研究リーダーが報告書のフォーマットを決めておけば、各人のノートから該当する項目を検索して流し込むことも可能。ワンクリックで報告書作成が完了する。

 また、多言語対応も特徴で、日本語を書き込んで検索することに加え、将来のバージョンアップではメニューも含めて日本語化される予定があるという。実際、ELNを全社的なインフラにするためには母国語のサポートは重要。例えば、BASFは今年の5月に「E-WorkBook Suite」を全面採用し、有機合成やポリマー、プロセス化学、触媒開発、生物プロセス、材料テストなどの研究業務に利用していくことを発表したが、システムがドイツ語化されていることも大きな要因だったとしている。

 菱化システムでは、製薬業向けには米ベルクエストのGLP/GMP適合アプリケーションなどの法規制対応システムを連携させながら、ELN製品の提案を行っていく考え。それと並行して、欧米で実績が増えている非製薬分野のユーザーを広げる努力を払っていくとしている。


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