アクセルリス:マックス・カーネッキア社長兼CEOインタビュー

科学的な革新で問題解決、SILM領域に照準

 2012.07.04−アクセルリスは、企業の研究開発における科学的な革新を支援する“SILM”(Scientific Innovation Lifecycle Management)領域に照準を定める。そのためのソリューションを幅広く用意するため、M&A戦略をさらに積極化させはじめた。「いろいろなベンダーが関連する領域に進出してきているが、プラットホームを統一できているのは当社だけだ」と述べるマックス・カーネッキア(Max Carnecchia)社長兼CEOに、最近の状況と今後の戦略を聞いた。

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 − SILMについて説明してください。

 「製造業を取り巻く環境は複雑で厳しいものがある。研究開発プロジェクトの25%しか市場に出なかったり、研究に投じたリソースの45%以上がムダになったり、市場に出た60%以上の製品に何らかの不具合があったりするという調査結果もある。コスト、時間、品質が大きな問題になっている。研究開発プロセスに科学的な革新を持ち込むことで、これらの問題を解消するのがSILMの狙いだ」

 「IT業界は、ERPやPLMなどのさまざまなコンセプトを生み出してきたが、研究の初期段階から商品化の手前までを一気通貫する考え方はなかった。SILMを実現するためにはプラットホームが重要であり、アクセルリスとしては“Accerlys Enterprise Platform”の上で製品のポートフォリオを増やしていこうとしている」

 − 最近の一連の買収もその方針に沿ったものですね。

 「その通りだ。コンチュアソフトウェアはシンクライアントベースの電子実験ノート(ELN)ベンダーで、手軽に導入できるため大学・官公庁、消費財(CPG)向けでも実績が豊富。製薬業を中心としたオンプレミス型のELNであるSymyx Notebook by Accerlysと補完し合う関係にある。またベルクエストは、GMPや21CFRパート11に準拠した品質管理ラボのために、SOP(標準業務手順書)を電子化して業務を自動化するシステムを提供している。さらにHEOSは、ELNなどを利用して共同プロジェクトを推進する際などに、化合物をクラウドベースで共有できる環境を実現する」

 − なるほど、わかりました。SILMを包括的に提供することを想定すると、現時点の製品ポートフォリオの充足率はどれくらいですか。

 「3〜4割というところだろう。まだまだたくさんの技術や企業が必要だし、それらをプラットホームに組み込んでいかなければならない。また、アクセルリスは生命科学分野だけでなく、化学・材料科学分野にもフォーカスしているので、広範囲にソリューションを揃えていくことになる」

 − それだけの資金が必要になるわけですね。前回のインタビューでは、1億6,000万ドルの現金を保有していることを強調していましたが、その後はどうですか。

 「今年の3月末時点で1億7,000万ドルだ。さらに増えているよ(笑)。今年もいくつか買収する予定はあるし、その中にははっとさせるような案件も含まれていると思う」

 − ところで、最近の業績も教えてください。すっかり成長性を取り戻したようですね。

 「モデリング専業だったころは8,000万ドル前後の売り上げをうろうろしていたが、2011年は1億5,499万ドル(非GAAP)で、前年比24.3%増だ。2012年度も1億6,500〜1億7,000万ドルを見込んでいる」

 − 事業別、地域別にはどうですか。

 「売上構成は、モデリング&シミュレーションが27%、ELNが19%、Pipeline Pilot 関連が28%、インフォマティクス関係が26%だ。地域別では、米国が49%、欧州が27%、アジアが25%という構成になる

 − ありがとうございました。最後に、日本市場に向けてお願いします。

 「SILM市場への取り組みだが、日本は米国よりも1〜2年の遅れがあるので、欧米の先行事例をテコに日本市場にアプローチしたい。アクセルリスは売り上げの21%を研究開発に投資しており、新しい製品を増やすばかりでなく、既存製品の開発・強化にも重きを置いている。他社にはできないことをやっているユニークなベンダーだという自負もある。顧客とともに成功することがわれわれの願いだ」


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