富士通が「SCIGRESS」をクラウドサービスとして提供

仮想デスクトップから利用、日額従量制も選択可能

 2012.10.20−富士通は、解析シミュレーションのクラウドサービス「TCクラウド」(テクニカルコンピューティング・クラウド)のメニューに計算化学を組み入れ、計算化学統合プラットホームパッケージ「SCIGRESS」の提供を開始した。クラウドセンターにリモート接続して、仮想デスクトップから「SCIGRESS」の専用GUIを利用できるため、手元のパソコンに「SCIGRESS」がインストールされていなくても分子モデルの作成、計算化学エンジンの起動、計算結果の解析と可視化を行うことができる。利用料金は月額または日額での課金となるため、初めてのユーザーが一時的に使用したり、計算業務のピーク時に処理能力の不足を補ったりする目的で利用するのに適している。

 TCクラウドは昨年12月にスタートしたサービスで、段階的にメニューを拡充。現在は、自社販売パッケージをオンデマンドで提供するSaaS型の「解析アプリケーションサービス」、ISVパッケージやユーザープログラムをクラウド上で動作させられるPaaS型の「解析プラットホームサービス」、個別のユーザーニーズに応えて導入支援・運用支援・教育支援・受託解析などを行う「解析ヘルプデスク」−の3種類のサービスで構成している。

 このうち、PssS型サービスは、クラウド上に顧客ごとに専有できる環境を用意し、計算リソースをホスティングするもの。このサービスで利用可能なアプリケーションとして、エムエスシーソフトウェアの汎用構造解析ソルバー「MSC NASTRAN」や汎用機構解析ソフト「Adams」、オートデスクのプラスチック射出成形シミュレーション「Moldflow」など25本が対応している。この場合は各ソフトベンダーとのライセンス契約が別途必要。

 SaaS型サービスは、自社開発を含めた富士通が取り扱うパッケージ5本を用意している。具体的には、非線形動的構造解析ソフト「LS-DYNA」、板成形加工解析ソフト「eta/DYNAFORM」、電磁波解析ソフト「Poynting」、計算化学統合プラットホーム「SCIGRESS」、汎用プリポストプロセッサー「eta/VPG-Prepost」の5本。

 使用環境としては、仮想デスクトップのほか、ウェブブラウザーからジョブ投入が行えるポータルシステムを用意しているが、どちらを使用するかはアプリケーションによって異なっている。「SCIGRESS」の場合は仮想デスクトップ経由での利用のみとなる。その仮想デスクトップだが、同社独自の高速画像圧縮技術“RVEC”(レベック)を採用しているため、遅延などはほとんど感じないということだ。

 実際の「SCIGRESS」の使用法と契約についてだが、ユーザーは手元のパソコンから仮想デスクトップ経由で「SCIGRESS」の専用GUIを操作し、分子や結晶、ポリマーなどの材料モデリングを行い、分子軌道法(MO)や分子動力学法(MD)による計算を実行し、それをもとに各種解析を行うことができる。契約は、TCクラウドを利用するための基本部分と、「SCIGRESS」を使うためのアプリケーション部分に分かれており、前者は月額従量制、後者は月額従量制か日額従量制かを選択することが可能(これはSCIGRESSの場合で、アプリケーションによっては月額従量制のみのものもある)。

 月額従量制では、利用するライセンス数を月ごとに変更することができる。前月に申請するだけでよく、あらためての契約手続きは不要。日額従量制は利用に応じて1日単位で課金されるが、利用しない月は料金ゼロのタイプ1と、利用しなくても一定の基本料金がかかるタイプ2に分かれていて、利用頻度に応じて選ぶことができる。利用日数が月に7日以内などのケースではタイプ1がお得だということだ。

 「SCIGRESS」のアプリケーションを使用する契約自体もいくつかに分かれており、基本サービスには共通GUIと基本的な計算エンジン(MM、MD、拡張ヒュッケル、ZINDO、DGauss)の使用権が含まれる。それに加え、オプションサービスとして、分子軌道法プログラムのMO-G/MO-S、分子動力学法プログラムMD-MEを使用することができるが、それぞれプリポストとエンジン部分は別契約となっている。すでに述べたように、課金方式は月額か日額かを選べる。

 そのほか、同社では、計算科学振興財団が民間に開放している「FOCUSスパコンシステム」の対応アプリケーションとして「SCIGRESS」を対応させている。同財団に申請して使用するが、富士通が最長3ヵ月間の「SCIGRESS」用ライセンスを提供する。この場合は、仮想デスクトップではなく、手持ちのパソコンに「SCIGRESS」の端末をインストールする必要があるが、そのライセンスも最長3ヵ月間で発行することになる。同社としては、FOCUSで並列化などの利用効果を確認し、TCクラウドに移行して本格的に活用してもらう、といった青写真を描いているようだ。

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<関連リンク>:

富士通(TCクラウド紹介ページ)
http://jp.fujitsu.com/solutions/hpc/tccloud/

富士通(SCIGRESS製品紹介ページ)
http://jp.fujitsu.com/solutions/hpc/app/scigress/

CCSnews(TCクラウドのプレス発表時の記事)
http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2011/2q/IT2011_2Qfujitsuengineeringcloud.htm

CCSnews(SCIGRESS最新バージョン2.4の記事)
http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2012/2q/2012_2Qfujitsuscigress24.htm


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