米CASが「SciFinder」に研究の生産性向上させる新機能

反応情報をタイプ別に分類、他の研究者との情報共有推進も

 2012.10.26−化学情報協会(JAICI)は、米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)が科学者向け研究ツール「SciFinder」を大幅に機能強化したと発表した。膨大な反応情報から必要なデータを素早く選別する機能が追加されたほか、グループ内の他の研究者との情報共有が行いやすくなるなど、研究を加速する効果が大きい。ウェブ版であるため機能強化は随時反映され、契約利用者はすぐに新機能を使用することができる。

 SciFinderは、CASの世界最大の化学物質データベース「CAS REGISTRY」をはじめ、化学物質と反応情報を集めたデータベース群をインターネット経由で利用できるシステム。文献情報も豊富で、世界中の企業や大学・政府機関に使用されている。

 ここ数年はとくに反応情報を検索・活用する機能が重点的に強化されてきており、今回の新バージョンでは“反応タイプ別のグルーピング機能”が搭載された。データベースが豊富なSciFinderは、網羅的な検索が行える半面、ヒット件数が多くなって目的の情報をみつけにくいという悩みがあった。今回の新機能は、検索結果の回答集合をあらかじめ500種類に分類された反応タイプ(ニトロ化合物のアミンへの還元など)によってグループ化することが可能。教科書によく出てくるような人名反応も分類に入っているため、学生にとってもかなり使いやすくなっているという。

 最近の機能強化を通し、物質回答集合の関連性に基づいたソート機能、生物活性情報の収録、試薬の入手情報へのワンクリックリンク、物性値による物質検索、CAS番号による構造式の呼び出し、物質・文献情報のポップアップ表示など、検索の利便性を高める機能が追加されてきており、単なる検索ツールから研究支援ツールへとまさに発展を遂げつつある。

 とくに今回、検索して得られた知識をわかりやすく整理するワークスペースツール「SciPlanner」を使った情報共有が容易になったことも大きなポイントだ。このツールは、検索結果の文献・物質・反応情報を自由にクリッピングしてまとめることが可能で、合成ルートの検討などで利用されることが多い。

 これまでは、最終的な考察結果をレポート出力し、画像やPDF形式で他の研究メンバーに渡すことができたが、今回はこれをプロジェクトデータとして保存(エクスポート)し、ファイル経由で相手がそれを開く(インポート)ことができるようになった。相手がプロジェクトにさらに手を加えてフィードバックするなど、チーム内のコラボレーションが活性化する効果も期待できるという。

 そのほか、近日中に約20万件の実測NMRスペクトルがデータベースに追加される。ソースとしては、Willyが提供するデータが約5万件、ACD/Labsが提供するデータが約20万件にのぼる。現在、SciFinderからは22万8,000件の1H-NMR、18万3,000件の13C-NMR、1万6,000件の19F-NMR、1,300件の29Si-NMR、1万件の31P-NMR、9万3,000件のIR、39万6,000件のMS、3,000件のラマン−の各実測スペクトルデータを利用できる。次回の追加で、実測NMRスペクトルだけで70万件ほどのデータ量になるため、物質の同定なども一段と容易になると期待される。

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<関連リンク>:

化学情報協会(トップページ)
http://www.jaici.or.jp/

化学情報協会(SciFinder製品紹介ページ)
http://www.jaici.or.jp/sci/SCIFINDER/index.html

CCSnews(SciPlannerの記事)
http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2011/2q/2011_2Qjaicisciplanner.htm


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