東工大が今秋にスパコンを「TSUBAME2.5」へ強化

GPU装置を最新型に換装、単精度演算の有効活用推進

 2013.07.30−東京工業大学学術国際情報センター(GSIC)は、現有するスーパーコンピューター「TSUBAME2.0」を強化し、今秋の稼働を目標に「TSUBAME2.5」として大幅な性能向上を図ると発表した。主な変更点はGPU(グラフィックプロセッサー)の換装で、最新ユニットを装備することにより、全体性能は現行の2.4ペタFLOPS(倍精度)から5.76ペタFLOPSへと2.4倍に高速化する。とくに単精度演算性能は4.8ペタFLOPSから3.6倍の17.1ペタFLOPSとなり、単精度性能だけなら11.4ペタFLOPSの「京」をも上回る。

 現行の「TSUBAME2.0」は2010年11月に稼働開始した。当時は世界のスーパーコンピューターのトップ500リストで4位にランクインし、それ以降もアプリケーションの実行性能でゴードンベル賞を受賞するなど、国際的にも評価が高い。演算性能の大半がGPUを活用して引き出したものであるため、CPUをメインにする一般のスパコン(京など)と区別し、“GPU型スパコン”と呼ばれる。

 東京工業大学では、もともと2014年度に「TSUBAME3.0」を開発する予定だったが、すでに繁忙期には利用率が90%以上、瞬間的には99%に達することもあるなど、計算資源がひっ迫した状況となっていた。また、申請中だった補正予算がおりたこともあり、この機にマシンを「TSUBAME2.5」に強化し、「TSUBAME3.0」を2015年度後半に稼働予定とする新たなロードマップを策定したもの。

 具体的に、「TSUBAME2.5」への強化は、GPU装置の「NVIDIA Tesla 2050」(Fermiアーキテクチャー)を最新型の「NVIDIA Tesla K20X」(Keplerアーキテクチャー)に換装することによって行われる。他のハードウエア部分は基本的に変わらないが、ただGPUユニットを差し替えただけでは全体のバランスが崩れてしまうため、システムソフトウエア面でチューニングが行われるという。

 とくに、「K20X」(Kepler)では単精度演算器と倍精度演算器が独立(前世代のFermiは単精度演算器2個で倍精度演算を実行)しているため、単精度演算の有効活用がポイントになる。この点に関し、GSICの松岡聡教授および青木尊之教授は、過去の計算では“念のために”倍精度で計算することが多かったが、最近は単精度計算の活用が目立ってきているとした。精度が問題ないアプリケーションでは、単精度で行うことで2倍以上の性能を引き出せることや、動かすデータ量が半分でメモリーへの負担が少ないことなどが注目されてきているという。実際に、気象予報での気流解析、自動車などの空力特性解析、材料開発分野の凝固成長シミュレーション、地震波伝播シミュレーション、気液界面を含む流れのシミュレーションなど、「TSUBAME2.0」の成果として多くの単精度演算が行われている。

 なお、今年6月のトップ500リストで世界一となった中国の「Tianhe-2」について、松岡教授は「GPU型スパコンとしてつくりは似ていて、われわれのTSUBAME2.0をよく研究して開発したという印象。ただ、ハード・ソフトは技術的には米国製スパコンと遜色なくなってきており、中国のレベルが上がっていると感じる。いずれにしても、TSUBAME3.0では各国のマシンを技術的に凌駕したい(最大性能の競争ではなく)」とした。

 とくに、「TSUBAME3.0」ではウルトラグリーン化を目指しており、大幅な省電力化を達成する計画。性能電力比で2006年に開発した「TSUBAME1.0」の1,000倍を実現させる。その1つとして、冷却電力を削減するため、今回の「TSUBAME2.5」に合わせて、新しい油浸冷却技術を評価するための実験設備を導入した。夏場以外は、冷却電気代がほぼゼロになると期待されるという。

 なお、「TSUBAME2.5」の構築は、NECがプライムコントラクターとして受注しており、本体のハードウエアは日本ヒューレット・パッカード製、GPU装置はエヌビディア製となっている。










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東京工業大学学術国際情報センター(トップページ)
http://www.gsic.titech.ac.jp/


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