富士通・東大・興和の共同研究グループがIT創薬で成果

がんを標的とする新規活性化合物を創出、創薬から開発ステージに移行

 2014.08.16−東京大学先端科学技術研究センターと富士通、興和は、IT創薬の手法により、がん治療を目的とする新規活性化合物の創出に成功したと発表した。標的たん白質との相互作用の強さを指標に22の化合物構造を選び出し、そのうちの8つを実際に合成して阻害活性を測定したところ、目標とする阻害活性を示す1つの低分子化合物を得ることができたという。今後、非臨床の有効性・安全性評価などを行い、今回の化合物をさらに改良していくことにしている。

 今回の共同研究は、2011年6月に東大先端研(システム生物医学ラボラトリー)と富士通(未来医療開発センター研究開発統括部バイオIT開発室)が開始し、同年7月に興和(医薬事業部東京創薬研究所)が加わったもの。東大先端研ががんなどの標的疾患に関係するたん白質の情報を提供、富士通がコンピューターケミストリーによるIT創薬技術を用いてそのたん白質に適合する低分子化合物を設計、興和が実際に化合物を合成し、阻害活性を測定するという分業体制となっている。

 富士通では、東大から提供された標的たん白質の立体構造をもとに、フラグメント法の一種である「OPMF」(Optimum Packing of Molecular Fragments)を利用して、たん白質の活性部位にフィットする構造的特徴を持った化合物を組み立てる“de novo”(デノボ)デザインにより化合物群を作成。次に、結合自由エネルギーを高精度に求める「MAPLE CAFEE」、厳密な力場パラメーターのアサインにより高精度な分子動力学計算を可能にする「FF-FOM」などのソフトウエアを用いて、標的たん白質と安定な複合体を形成すると考えられる22種類の化合物構造を選び出した。

 共同研究グループは、こうしたIT創薬手法に加えて、従来の創薬技術をベースにしながらモデリングによる支援を組み合わせる方法にも取り組んでおり、そちらでも複数の候補化合物を発見できているという。

 なお、「OPMF」や「MAPLE CAFEE」は、富士通が内製したソフトで、創薬支援サービス事業を実施する際の内部ツールとして活用されており、外販はされていない。

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<関連リンク>:

富士通(OPMF 紹介ページ)
http://jp.fujitsu.com/solutions/life/products/research/opmf/

富士通(OPMF パンフレット)
http://img.jp.fujitsu.com/downloads/jp/jlife/OPMF_20100525.pdf

富士通(MAPLE CAFEE 紹介ページ)
http://jp.fujitsu.com/solutions/life/products/research/maple-cafee/

富士通(MAPLE CAFEE パンフレット)
http://img.jp.fujitsu.com/downloads/jp/jlife/MAPLECAFEE_20111124.pdf


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