BIOVIAが材料設計支援統合ソフト「Materials Studio」最新バージョン8.0

新しい計算手法を実装、長時間MDや反応速度定数予測など

 2015.03.07−ダッソー・システムズ・バイオビア(BIOVIA)は、材料設計支援のための統合モデリング&シミュレーションソフト「Materials Studio」(マテリアルスタジオ)の最新バージョン8.0を提供開始した。新しい計算手法が導入され、長時間スケールのシミュレーションが可能になったほか、化学反応に関連する解析や、電子部品・燃料電池などの開発に役立つ材料特性計算機能などが強化されている。

 最新版8.0では、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を構成する「Visualizer」も強化されている。例えば、グラフ作成機能が刷新され、タイトルの編集やフォントの変更、表示範囲の固定など、ポイントを強調した表現力豊かなグラフを作成できるようになった。エクセルで再加工しなくても、プレゼンテーションや論文に使用できるグラフになるため研究者の生産性向上につながる。

 また、新しく実装されたディスオーダーツールは、合金や空孔を持つ結晶など指定した組成比を満たす原子配置を網羅的に発生させることが可能。対称性を考慮して重複した構造を自動的に排除するので、効率良く初期配置を決め、スクリプトを使って配座解析を行うことが可能。

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 一方、計算エンジンの機能強化については、古典力学系ではRattleアルゴリズムの実装が注目される。これは、分子動力学法(MD)をベースにした計算エンジンである「Forcite」と「Mesocite」で利用できる。通常のMDは1フェムト秒ステップで分子の時間変化を追跡するため、連続で計算機を回しても10ナノ秒程度の時間スケールまでしか現実的には計算できないという問題があった。この場合、計算対象の分子の原子間距離(結合長)を固定することで、タイムステップを2〜4フェムト秒に延長できるが、どの結合を固定するかの判断が難しかった。

 今回のRattleアルゴリズムは、これを自動化する機能を実現しており、ユーザーがタイムステップを何フェムト秒にしたいかを指定するだけで、すべての設定が自動的に行われる。これにより、手軽に長時間スケールのMD計算に取り組むことが可能になった。

 また、機械特性の計算の対象範囲が拡大し、大きな系に対応できることが特徴だった従来のコンスタントストレイン法に加えて、ポリマーなどのソフトマター(ストレスフラクチュエーション法)、金属やセラミックスなどのハードマター(へシアン行列を使ったスタティック法)に対応できる新手法が搭載されている。

 さらに、多数のコア上でP3M Ewald法を使用する際の計算パフォーマンスが大きく改善された。10万原子クラスの系に対する計算で、同じコア数でも計算速度が2倍に向上しているという。そのほか、COMPASS II力場のパラメーターが改良されて、量子力学計算に近い計算精度が得られるようになっている。

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 量子力学計算系の機能強化では、反応速度定数の計算ができるようになったことがポイント。気相反応は「DMol3」、表面上での反応には「CASTEP」を使用し、反応物から生成物に至る遷移状態の探索と組み合わせることで反応速度定数を導き出す。将来的には、化学工学分野と連携できる期待もあるようだ。

 また、DMol3を使って電子伝導度の計算が可能になった。これにより、電子デバイスの透過率や電流電圧特性の予測において、分子レベルの考察が容易に行える。同様の計算は「DFTB+」を使ってもできたが、DMol3が対応することで計算対象が広がったことになる。

 さらに、分子の光学特性の解析では、時間依存密度汎関数法(TD-DFT)で光の吸収をシミュレーションできたが、今回新たにDMol3による励起状態の構造最適化をベースにして、発光の波長を求めることが可能になった。DMol3は溶媒効果を入れたCOSMO法での計算が可能であるため、光学特性をより詳細に解析できるという。DMol3では、高並列環境での計算時におけるメモリー分散処理も改良され、より大きな系の計算にも対応できるようになっている。

 CASTEPに関しては、Tkatchenko-Scheffler(トコチェンコ−シェフラー)の分散力補正を利用できる元素の拡張、TD-DFTを用いた分子の吸収スペクトル計算、新しい擬ポテンシャルを使用した高精度計算−などの機能強化も行われた。

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<関連リンク>:

BIOVIA(日本法人トップページ)
http://accelrys.co.jp/

BIOVIA(Materials Studio 製品情報ページ)
http://accelrys.co.jp/products/materials-studio/index.html


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