菱化システムが最新版の「MOE 2014.09」をリリース

SBDD向けプロジェクトDB機能搭載、タンパク質工学の新手法も

 2015.01.22−菱化システムは、加CCG社が開発した統合計算化学システムの最新版「MOE 2014.09」を昨年12月にリリースした。創薬・生命科学研究のための分子モデリング&シミュレーションソフトで、ケムインフォマティクス/データベース機能も備えている。今回の最新版では、タンパク質などの生体高分子を扱う機能が重点的に強化されており、SBDD(ストラクチャーベース・ドラッグデザイン)関連での実用性が大きく向上している。

 とくに、新規能の MOE Project は、結晶構造や電子密度マップ、識別子、活性値などの実験データ、計算した物性値などのデータをまとめて、SBDD向けのプロジェクトデータベースに統合することができる。詳細な設定が可能なデータ整理ツールを搭載しており、立体構造の重ね合わせ、配列のアラインメント、構造/配列アノテーション、分子記述子の算出などを自動で行うことが可能。最新データをチーム内で共有することを容易にするように設計されている。

 また、この機能を利用して作成されたキナーゼ、セリンプロテアーゼ、核レセプター、アスパルチルプロテアーゼ、炭酸デヒドラターゼなど12種類のタンパク質ファミリーデータベースが提供される。正確なアノテーション付けが行われており、詳細なホモロジー検索やループモデリングなどですぐに活用することができる。

 さらに、タンパク質工学関連機能として、フォーカスドライブラリーと呼ばれる新しい手法を実用化したことが注目されている。従来、タンパク質に変異を導入する際には、その突然変異体の探索空間が広大になってしまい、組み合わせ問題の爆発が生じて現実的な解を得ることが難しくなることが多かった。これに対し、フォーカスドライブラリーはコンピューター上で仮想的にファージディスプレイを行い、突然変異体の広大な探索空間から目的の物性値(熱安定性スコア、親和性スコア、ゼータ電位など)を持つタンパク質のアミノ酸配列を推定する。実験における突然変異の頻度の予測値を算出するようなかたちで、目的の物性を持つ確率を突然変異部位のアミノ酸の種類ごとに集計することにより、目的の物性値を得るために重要な突然変異の部位とアミノ酸の種類を推定することができるという。

 そのほか、非天然アミノ酸(NNAA)に対応したモデリング機能が大幅に強化された。前のバージョンでも、エネルギー計算のための力場の準備や部分電荷の割当などが行われていたが、今回の最新版ではタンパク質ビルダーやデザインツールで非天然アミノ酸を扱うことが可能。側鎖配座ライブラリー(ロータマーライブラリー)の構築や、新しい熱安定性スコアなどの評価関数でも非天然アミノ酸を含むタンパク質に対応できるようになった。これにより、ペプチド医薬品の開発、酵素の機能性向上、タンパク質間の架橋、プロパティ(親和力、安定性、溶解性、分解性など)の調整−などの用途での活用が期待される。

 一方、計算化学関連の機能では、量子化学計算(QM)とのインターフェースが強化された。Gaussianと連携して、収束しにくい構造最適化計算を自動化するマルチステージプロトコルを搭載したほか、力場計算によって得られた配座をQMで構造最適化するなどの一連の処理も実行しやすくなった。また、分子動力学(MD)関連では、NAMDとの連携が強化され、マルチコア、クラスター、GPUを利用した計算設定が、MOEのGUIパネルから行えるようになった。




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<関連リンク>:

菱化システム(科学技術システム事業部のトップページ)
http://www.rsi.co.jp/kagaku/cs/index.html

菱化システム(MOE 製品情報ページ)
http://www.rsi.co.jp/kagaku/cs/ccg/index.html

加CCG(トップページ)
http://www.chemcomp.com/


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