富士通がユビキタス端末利用のIoT事業を本格展開

各種センサーから“人”中心の情報活用、まず片目型HMDを製品化

 2015.05.12−富士通は11日、ユビキタス端末を活用したIoT(モノのインターネット)事業を本格的に推進すると発表した。ヒトやモノの状態・状況・周囲の環境などをセンシングし、それらのデータをビジネスに活用できるようにするパッケージ「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE」(ユビキタスウエア)を開発し、今年の12月から提供を開始する。「ユビキタスウエア」を組み込んだIoT端末も合わせて製品化する計画だが、第1弾としてヘッドマウントディスプレイ(HMD)を同日発売した。工場や屋外作業などの作業者が頭に装着し、作業手順や点検項目などを眼前に表示させながら利用することができる。

 富士通のIoTソリューションは、“ヒューマンセントリック”にフォーカスしており、人に役立つことを重要視しているという。人に装着できるセンサー端末をすでにいくつも開発しており、先行実証実験の例として、フィンランドの南ポフヤンマー医療地域では、入院患者にロケーションバッチ(屋内外測位端末)を装着し、必要な時に即座に駆けつける院内サービスの共同研究を実施中。また、富士通ネットワークソリューションズではネットワーク工事の現場作業者にバイタルセンジングバンドを装着し、作業者の位置情報や加速度、周囲の気温・湿度の変化などから熱中症を防止するための実証実験を行う予定となっている。

 製品化する「ユビキタスウエア」は、各種のセンサーと、それを直接制御し解析・分析する専用マイコン、無線通信機能(BLE対応)を組み合わせた「ユビキタスウエア・コアモジュール」、さらにクラウド側でビッグデータを学習・分析する「センサー活用ミドルウエア」で構成される。

 コアモジュールは、加速度、気圧、地磁気、ジャイロ、マイクなどのセンサー群と、ヒューマンセントリックエンジン搭載のLSIおよびBLE通信機能をパッケージ化したモジュール。心拍センサーやGPSなどのオプションも装備できる。一方、センサー活用ミドルウエアにはセンシングミドルウエアとロケーションミドルウエアがある。前者は、センサーデバイスから収集したデータをもとに、人の行動パターンを分析し、転倒などの異常状態を検出する分析アルゴリズムを搭載。後者は、設定した屋内外の範囲内で人や物の位置情報を提供する機能を持っている。

 センサーの生のデータではなく、意味のある情報として提供できることがポイントで、具体的には人の動きから活動量やエネルギー消費量を算出、人の動きを立体的にとらえて立位・座位・横臥位などの身体姿勢を判断、人の動きや気圧変化などの特徴から人の転倒状態を判定、移動距離や方向の推定に基づく行動軌跡データの取得、温湿度が身体に与える熱ストレスの状況を把握し危険時に注意喚起、装着者の心拍数の変化から身体負荷を推定し注意喚起−などが可能。

 第1弾として先行発売されたヘッドマウントディスプレイは、0.4インチの片目ディスプレイとカメラ、マイク、各種センサーを備えた非シースルー形状のデバイスで、附属のウェアラブルキーボードや音声による操作が可能。防水・防塵、落下による衝撃にも耐えるタフな構造で、両手を空けたままでも使えるため厳しい作業環境にも適している。

 プラントの保守点検や工場の製造現場などで、画像や映像、音声によって作業支援を行うことが可能。熟練者がリモートでサポートすることもできるため、経験によらず作業品質の向上に寄与できるという。なお、このヘッドマウントディスプレイの開発には、米コーピン社の表示デバイス、光学系ならびに音声関連技術が利用されている。

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<関連リンク>:

富士通(ユビキタスウエアの製品紹介ページ)
http://www.fmworld.net/biz/uware/






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