SIMULIA:ロジャー・キーン副社長インタビュー

マルチスケールなど連成解析を強化、3Dプリンターへの対応急ぐ

 2015.11.14−ダッソー・システムズのSIMULIAブランドを担当するロジャー・キーン(Roger Keene)副社長(ワールドワイドオペレーション)がこのほど来日し、今後の戦略などについてインタビューに応じた。基本的にマルチフィジックスとマルチスケールの両軸で、幅広い業種の設計ニーズを満たすソリューションを整備・強化していく方針。とくに、今後の動向としては、物体を積層して成形する3Dプリンターなどの付加製造技術に注目しており、それに対応した設計・解析システムの開発に力を入れているという。

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 キーン副社長は「技術革新の原動力はシミュレーションであり、解析する系が部品からサブシステム、全体システムへと包括的になるとともに、自動運転車同士の通信など独立した全体システム間の連携まで考慮した設計が重要になってきている」とし、マルチフィジックス(構造と個体、熱、流体、電気、化学、制御など)/マルチスケール(物理レベルミクロ非連続体、物理レベルマクロ連続体、論理レベル、機能レベル)のソリューションマップを埋めるために、既存製品群の機能強化、新たな技術を持つ企業の買収、パートナーシップによる技術の発展−などの取り組みを進めていると説明。

 自動車を例にあげると、分子スケールではタイヤやボディに使われるプラスチックの分子構造を解析・予測し、メソ/ミクロスケールでは材料特性としての詳細や異なる材料間の相互作用などを解析、コンポーネントレベルでは補強材も含めたタイヤ構造物全体の特性をシミュレート、最後にシステムレベルでは実際の自動車を路面上で走行させるようなシミュレーションが行われるという。

 具体的には、BIOVIAブランドの製品群との連携で分子スケールからメソスケールの解析エンジンとの連成を試みているほか、システムレベルでは昨年買収した独SIMPACKの技術をベースにマルチボディシミュレーション(MBS)との統合を進めている。車体全体の操縦安定性や走行時の快適性などのデータが得られるため、部品にかかる荷重をABAQUSで解析したり、逆にABAQUSの情報をスーパーエレメントとしてSIMPACKの解析に適用したりするなどの連携が可能になる。すでに、11月にリリースされたABAQUS最新版に一部機能が盛り込まれている。

 一方、今後の動向として、とくに注目しているのが3Dプリンターを利用した付加製造技術。これまでは実際の部品や製品ではなく、形状などを確認するための試作として使われることが多かったが、最終製品で使用するような素材(高分子系コンポジット、金属系材料)で成形する技術も登場してきており、プリンティングしたものがそのまま最終製品になるケースが期待されているようだ。

 「付加製造を支援するため、デザイン、シミュレーション、デジタルマニュファクチャリングの3つの要素が一体になる必要がある。とくに、設計と実物とのギャップを埋めることが重要で、応力や歪みを想定して形状を設計するとともに、材料特性も設計段階で考慮しなければならない。また、製造に向けては、熱による残留応力の蓄積や歪みによる許容誤差なども予測しておく必要がある」とキーン副社長。現在、トポロジー最適化ツールTOSCAの利用や、ABAQUSによる積層温度・残留応力の解析など、要素技術は整備されつつある。キーン副社長は、「数年以内には実運用していただけるソリューションとして提供したい」と述べた。

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<関連リンク>:

ダッソー・システムズ(SIMULIAのトップページ)
http://www.3ds.com/ja/products-services/simulia/


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