CCS特集2016冬:材料インフォマティクス

情報統合型物質・材料開発イニシアティブ 伊藤聡プログラムマネージャー(科学技術振興機構)インタビュー

材料DBの資産を活用、数理科学的手法を取込み

 2016.12.06−よく聞かれるが、情報統合型物質・材料開発イニシアティブ(MI2I、エム・アイ・スクエア・アイ)は米国MGIの後追いではない。そもそも日本は材料データベースの開発で先行しており、1990年代から科学技術振興機構(JST)が中心になって整備を進めてきたという経緯がある。その後、物質・材料研究機構(NIMS)がそれらを引き継いで発展させ、現在は「MatNavi」というかたちで各種のデータベースを提供してきている。データ駆動型材料開発の必要性を訴えるレポートも10年ほど前に出されており、発想でも米国に遅れてはいなかった。

 また、MGIに参加しているのはほとんどが材料研究者だが、MI2Iは数理科学者を仲間に引き込み、方法論からきちんと研究していこうという考え方が大きく違うと思う。統計数理研究所を中心とする文科省の「数学協動プログラム」とも連携しており、MI2Iがハブとなって、全国の大学と協力して材料開発に数学的な手法を持ち込んでいく。とくに、データを具体的に活用する上では数学が重要になると期待している。

 とくに、日本にはMatNaviという優れた材料データベースがあるので、まずはこれをプラットホームとして、材料インフォマティクス研究で活用できるシステムを実現させる。すでに、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)を経由してそれぞれのデータベースにアクセスする仕組みはできており、年度内にはデータを活用するためのツールと一体化させたデータプラットホーム(DPF)のプロトタイプが完成する。コンソーシアムに参加する企業のみなさんには、このDPFを自由に利用してさまざまな課題に取り組んでいただきたい。

 プロジェクト自体は2019年度で一区切りだが、NIMSを材料インフォマティクスのポータルとし、データもツールも揃った“オープンイノベーションの場”にすることが最終的な目標だと思っている。2020年度からは産業界がDPFをフル活用できる状態にしたい。


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