CCS特集2017年夏:アマゾンウェブサービスジャパン

クラウド基盤が急拡大、GxP準拠でCSV対応も

 2017.06.21−アマゾンウェブサービスジャパンは、ライフサイエンス業界向けのクラウド活用をさらに推進する。創薬研究の段階から非臨床・臨床、製造・販売後調査、マーケティング・営業活動まで、ライフサイクルの各ステージにおいてクラウド基盤としての「アマゾンウェブサービス」(AWS)が急速に実績を伸ばしている。低コストで柔軟かつ弾力的に計算資源を活用できることがポイントだ。

 同社は、2013年ごろから製薬業向けのIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャー)に本格的に乗り出しており、国内では昨年、システムインテグレーターのNTTデータグローバルソリューションズ、JSOL、東洋ビジネスエンジニアリング、日立システムズ、フィラーシステムズの5社と協力して、GxP準拠のコンピューター化システムバリデーション(CSV)対応リファレンスガイドを作成。今年、日本GxPユーザーグループを発足させている。

 これにより、安全性試験や臨床試験、医薬品製造などのGxPシステムをAWS上で構築・運用することが実際的に可能になった。GxPでは必須要件であるISO9001(品質マネジメント)、ISO27001(情報セキュリティ)、ISO27017(クラウドセキュリティ)、ISO27018(個人情報保護)などの認証も取得しており、ユーザー企業は安心して利用することができる。また同社では、オンプレミスのシステムをクラウドに移行させるためのカスタマーサポートを提供するほか、コンプライアンスチェックのためのセルフサービスの仕組みも用意している。

 一方、創薬研究のためのHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)基盤としても利用実績は豊富。必要なときに必要なだけの計算機を利用できることが特徴で、スパコンタイプの計算に強い大規模クラスター型の「Amazon EC2」、大量データの処理に適したグリッド型の「Amazon EMR」(Hadoop対応)など、選択肢も広い。EC2ではGPU(グラフィックプロセッサー)も利用可能で、エヌビディア製の最新GPU「Tesla K80」を好きなだけ使用することができる。年内には、次世代型の「同V100」の提供も開始する。GPUも含め、使用するインスタンスの設定はワンクリックで、計算途中でも変更可能だという。

 また、ストレージサービス「Amazon S3」、データウェアハウスサービス「Amazon Redshift」、ビジネスインテリジェントツール「Amazon QuickSight」など、周辺サービスも充実している。大量データをアップロードする際の障害を除くため、1台で100テラバイトの容量がある「SnowBall アプライアンス」を使って安全にデータを配送するサービスも用意している。

 さらに、「AWS パブリックデータセット」として、世界中の公開ゲノムデータをS3上にアップロードしており、だれでも無償で研究に利用することが可能だ。

 HPC関係のユーザー事例としては、ノバルティスが1,000万化合物のバーチャルスクリーニングに使用した実績が有名。社内には500台のサーバーがあるが、この処理を行う空き時間がなかったため、AWSの利用を決めた。1万台の構成で9時間で処理は終わったが、社内サーバーの1コアに換算すると、40年かかる計算に相当したという。


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