CCS特集2017年夏:物質・材料研究機構

革新的材料開発を強化、MI活用へDB整備・拡充

 2017.06.21−物質・材料研究機構(NIMS)は、特定国立研究開発法人として革新的材料開発力強化プログラム「M3」(エムキューブ)を前進させるため、今年4月に「MOP」(マテリアルズオープンプラットフォーム)、「MGC」(マテリアルズグローバルセンター)、「MRB」(マテリアルズリサーチバンク)からなる新体制を発足させた。材料インフォマティクス(MI)のための国家プロジェクト「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ」(MI2I)も、新体制の柱の1つに位置づけて強力に推進していくことになる。

 M3において、MOPは産業界と研究機関によるオープンイノベーションを推進する枠組、MGCは世界中の人・モノ・資金を集める国際研究拠点を意味している。それに対し、MRBはこれらの活動を最大化するための研究基盤技術を構築することが使命であり、ここにNIMSが持つ世界最先端の計測設備とともに、MI2Iで開発中の物質・材料データプラットフォーム「DPF」が配置された。

 とくに、材料研究のためのツールとしてデータベース(DB)は重要であり、NIMSがインターネット上で運営・公開している世界最大級の物質・材料DB「MatNavi」のさらなる充実が期待されるところ。今回、DB整備を担当するグループが「材料データプラットフォームセンター」として組織を一新させたことも特筆される。

 MatNaviには、高分子材料の「PoLyInfo」、無機材料の「AtomWork」、金属材料の「Kinzoku」をはじめ、長年の材料研究の成果を集めた20種類近いDB、データシートが公開されている。もともと専門家が人手でキュレーションしたため、データの品実に優れていることが特徴だが、材料インフォマティクス向けに大量データを蓄積するための新しい取り組みも行っており、計測装置からの直接取り込みや、学術論文からのテキストマイニングによるデータ生成を進めている。

 さらに、AtomWorkに収録された結晶構造データを対象に第一原理計算を実行し、その結果を集めた電子構造状態DB「CompES-X」も充実してきている。AtomWork自体が、スイスのMPDS社との連携によりデータ件数が5万件から25万件へと大幅に増加しており、今後の計算データの拡大が期待されるだろう。また、NIMSで実際に使用している電子構造計算のためのスクリプト「TOAST」を、だれでも無償でダウンロード(第一原理計算ソフトは別途必要)して利用することもできるという。

 一方、MI2Iの近況としては、すでにコンソーシアムメンバーが50社ほどになっており、今年2月からメンバー企業に対してDPFが開放されている。隔月ペースで会合ももたれており、毎回60〜70人が集まるということだ。コンソーシアムは、拠点内での本研究とは別に、民間企業が自由に材料インフォマティクスに取り組む場として用意されたもので、どんな成果が出てくるか興味深い。


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