CCS特集2017年夏:シュレーディンガー

新薬の創出で成功事例、実験値と同列の精度で計算

 2017.06.21−シュレーディンガーは、新薬開発のためのモデリング&シミュレーション(M&S)技術で着々と実績を築いており、その成功事例も注目を集めている。同社が共同創設者となってM&S技術をフルに提供してきた米創薬ベンチャー、ニンバス社(Mimbus)が手がけたACC阻害薬プロジェクトが米ギリアドサイエンスに買い取られたのを皮切りに、モルフィック社やリレイ社など出資先をさらに拡大。M&S技術の有効性がすでに実証されたと自信を深めている。

 同社は、新薬を創出した技術力を製薬企業のトップエグゼクティブにアピールすべく、5月末にニューヨークで「ドラッグディスカバリーサミット」を開催。元マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏が基調講演を行った。ゲイツ氏は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じて、世界中の人々の健康と福祉の向上を目指す活動を精力的に展開しているが、実はシュレーディンガーの出資者の1人でもある。2010年以来、何度か追加で出資している。当日は、「インシリコ創薬の偉大なチャレンジに、シュレーディンガーの多大な貢献が期待される」とコメントしたという。

 このサミットの中で競争力のある独自技術として取り上げられたのが、たんぱく質とリガンド間の結合自由エネルギーを予測する「FEP+」。GPU(グラフィックプロセッサー)を利用して高速計算する分子動力学ソフト「Desmond」をベースにしており、1Kcal/molの誤差で活性を予測できる。実験値と同列に扱うことのできる精度であり、研究期間とコストを大幅に短縮できるとして注目度が高い。GPUが必須なため、計算環境にコストがかかるのが問題であるため、クラウドサービスに対応するなどライセンスも工夫しているということだ。

 GPU対応のDesmondは材料科学分野でも関心を集めている。ただ、同社は材料系は後発であるため、他社ソフトを導入しているユーザーがほとんど。このため、まずはその威力を確かめたいとして、受託解析サービスを利用するケースが増えている。また、量子化学計算(平面波基底密度汎関数法)のQuantum ESPRESSOに対応するため、今年1月に開発元と正式にアライアンスを結ぶなど、引き続き材料系M&Sの機能を強化していく方針だ。

 製品面では、リニューアルしたGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ソフト「Maestro 11」の評価が高い。直感的に操作できるようになったため、メディシナルケミストにもユーザーの裾野が広がったという。


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