米アスペンテック:アントニオ・ピエトリ社長兼CEOインタビュー

アセットの全体最適を実現、AI・機械学習で故障予知も

 2017.05.23−米アスペンテクノロジー(アスペンテック)は、生産現場のアセットすべてのライフサイクル全体にわたって財務利益を最大化するための“アセット最適化”ソリューションで、実績を急速に伸ばしている。プロセス産業向け統合ソリューション「aspenONE」において、設計・シミュレーション、製造・サプライチェーン領域に続く、第3のスイート「aspenONE Asset Performance Management」(APMスイート)として昨年から提供開始したもの。とくに、機械学習などを用いて、プラントのトラブルを未然に防止する技術が含まれており、「計画外のダウンタイムをゼロにすることが目標」(アントニオ・ピエトリ社長兼CEO)だとして注目される。

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 ピエトリ社長(Antonio J. Pietri)は、テクノロジーが社会の生産性を向上させてきた歴史を概観し、「1850年代に蒸気機関が発明され、1990年代に初期のロボティクス、1995年からのIT革命などが生じてきた。現在進んでいる技術革新は、米国では“オートメーション”と呼ばれており、それには高度なロボティクス、人工知能(AI)、機械学習などが含まれる。しかし、プロセス産業についていえば、1980年代からデジタル化と自動化が進行しており、その意味ではトレンドを先取りしていたと思う」と述べる。

 実際、アスペンテックの設立は1981年で、プロセス設計、プロセスエンジニアリングのためのシミュレーション技術からはじまって、数多くの技術やベンダーを買収しつつプロセス産業の幅広いニーズに応えてきた。現在は、統合ソリューション「aspenONE」としてすべての製品がまとめられており、大きく設計(概念設計、基本設計、装置設計、ボトルネック解消とアップグレード計画)、製造およびサプライチェーン(長期予測および計画、生産計画・スケジューリング、製造運転管理、高度制御および運転最適化)の2つの領域をカバーしている。

 ピエトリ社長によると、顧客で稼働中の同社のシステムが生み出す価値は、年間500億ドルに及ぶという。

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 − APMの概念をうかがうと、プロセスの全体最適から、アセットの全体最適へという大きなパラダイムシフトを感じます。

 ピエトリ社長「プロセスで生じている現象を深く理解し、コントロールできる範囲を広げ、プラント全体のライフサイクルを延ばすことが可能になる。設備の信頼性、プラントの運転のしやすさ、機器のメンテナンスのしやすさなど、デザインの段階でこれらの複雑なバランスを取るようにするので、アセットから常に最大の価値を引き出すことができる」

 − ポイントはなんでしょうか。

 ピエトリ社長「アセットの信頼性とメンテナンスが重要になる。実際、プロセスやオペレーションをいくら最適化しても障害は起こる。何かが正常に機能しなくなり、プラントがダウンしたり品質に重大な影響が出たりする。82%の障害は既存の予防保守テクニックでは対処できないものだったという報告もある。これにどう対処するかが課題だ。APMスイートでは、知識、ノウハウ、テクノロジー、アナリティクスなどを駆使し、メンテナンスそのもののデザインを考え直し、アセットの信頼性を高めていく。プラントの稼働時間を最大化し、計画外のダウンタイムをなくすことが目標だ」

 − 現在のAPMスイートの構成要素を教えてください。

 ピエトリ社長「最近買収した製品で多く構成され、信頼性分析のAspen Fidelis Reliability、機械学習のAspen Mtell、多変量解析のAspen ProMV、自社開発のAspen Asset Analytics−の4つの製品が含まれている。プロセスモデリングの専門知識とビッグデータ機械学習を組み合わせたアナリティクスにより、プロセスや装置、あるいはプラント全体システムというアセットに対し、予測的および処方的なガイダンスを示すことができる」

 − 機械学習でプラントの障害を予防することができますか。

 ピエトリ社長「Mtellの導入事例だが、米国東部の大手鉄道会社であるCSX社は、履歴データとメンテナンスログを機械学習させることにより、数週間から2ヵ月以内に故障する可能性がある機関車を特定し、それを運用から外すことで数百万ドルの損失が生じることを未然に食い止めた。プロセス産業でも、プラント設備の故障を予測するため、米国と欧州で実際に使用されているほか、評価中のユーザーも多い」

 − 実際の事故や障害は人的なミスに起因するものが多いと思います。それらも防止できますか。

 ピエトリ社長「機械学習とアナリティクスにより、オペレーションの最適条件を逸脱していることを検出してアラートを発することができるので、作業員のミスで不安定になった運転状況を的確に把握することが可能。素早い対処が事故防止に役立つと思う」

 − なるほど。よくわかりました。

 ピエトリ社長「ただ、こうした解析をタイムリーに行うためには、大きな計算能力が必要とされる。クラウドで大量の計算資源を活用できるなど、インフラとしても機が熟していたことが大きな要素になっている」

 − ところで、aspenONEのスイート別の売上構成比はどうなっているのでしょうか。今後、APMスイートはどれほど伸びる期待がありますか。

 ピエトリ社長「APMスイートをリリースする以前は、設計領域が65%、製造・サプライチェーン領域が35%という比率だ。現在、APMスイートは急速に成長しており、今後は重要な柱になってくれると期待している。また、AIや機械学習は将来性のあるテクノロジーだ。これをプロセス産業に適用するために、当社は最も優れたポジションにいると思う」

 − ありがとうございました。

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<関連リンク>:

米アスペンテクノロジー(トップページ)
http://home.aspentech.com/

米アスペンテクノロジー(APMスイート製品紹介ページ)
http://www.aspentech.com/products/Aspen-Asset-Performance-Management/

アスペンテックジャパン(トップページ)
http://www.aspentech.com/japan/


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