富士通が「TCクラウド2.0」で材料インフォを支援

クラウド上で深層学習機能を提供、GPU対応など環境整備

 2017.12.05−富士通は、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)専門クラウドサービス「TCクラウド」を機能強化し、材料インフォマティクス(マテリアルズインフォマティクス=MI)を支援するサービスに乗り出した。「TCクラウド2.0」と名付けて深層学習(ディープラーニング)に利用できる環境を用意し、収集・蓄積した材料データから材料の物性や組成を予測・設計するための知識を引き出すことができるようにする。計算・情報・実験の三位一体による協動・共創の場を提供することで、MI研究の基盤になることを目指していく。

 TCクラウドは2011年12月にスタートしたもので、流体解析・構造解析・計算化学などのアプリケーションを従量課金で利用できるSaaS(サービスとしてのソフトウエア)型クラウドサービス。商用アプリケーションや海外OSS(オープンソースソフト)を広くサポートしている。

 今年の夏に機能強化が実施され、GPU(グラフィックプロセッサー)搭載計算リソースを追加。新たにエヌビディアの「Tesla K80」搭載サーバーを時間従量/日額従量/月額従量で使用できるようにした。これに合わせ、計算用高速ストレージも日額従量(従来は月額従量のみ)で追加利用できる料金を設定し、一時的に大きなストレージ容量を必要とするAI(人工知能)/機械学習に適した環境を整えた。また、計算リソースの従量価格も20%前後値下げし、より競争力のある料金を実現している。

 これらに基づく「TCクラウド2.0」をベースに、今回新たにMI支援サービスをスタートする。とくに、富士通のAIである「Zinrai」を基盤としており、深層学習技術として同社独自の“ディープテンソル”を活用する。これは、人やモノのつながりを表すグラフデータから新たな知見を導く技術で、金融取引履歴から不正検知やリスク予測をしたり、SNSデータから顧客への商品レコメンドや退会予測をしたり、通信ログから侵入検知や脆弱性対策などのセキュリティに利用したりする応用展開が進んでいる。

 これに加え、化学構造をテンソル表現(グラフ全体構造を含んだ統一的表現)に変換し、前出の応用例と同様に、深層学習による自動特徴抽出を行うことができる。すでに、創薬におけるバーチャルスクリーニング(化合物とタンパク質の結合予測)に使用され、人手ではみつけられなかった新しい約200の特徴を獲得し、それらを使って従来手法よりも予測精度を10%引き上げたなどの成果が出ているという。

 TCクラウド2.0では、クラウド上でディープテンソルを用いた深層学習を行わせることが可能。MI用途に適応させ、材料に関わる現象の原因分析や物性改良への指針を得ることが狙いとなっている。学習させるためのデータを蓄積・管理するインフォマティクスシステムや、材料シミュレーションのためのソリューションは、富士通グループで別途提供することが可能であり、TCクラウド2.0と合わせて、MI研究を推進する上での総合的なニーズに応えていく。

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<関連リンク>:

富士通(TCクラウド 製品情報ページ)
http://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/tc/sol/tccloud/


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