シミュレーションズプラス:ウォルトスCEO、ディベラ社長インタビュー

3社統合で新体制スタート、ディープラーニングも採用へ

 2017.11.14−薬物動態の予測・解析ソフトで知られる米シミュレーションズプラスは、2014年9月に買収した米コグニジェンに続き、今年6月には米ディリシム(DILIsym Services)を統合し、製品とサービスの範囲を大幅に拡張した。NASDAQに上場しているシミュレーションズプラス(シンボルはSLP)が存続会社となり、3部門から構成される企業へと大きく組織を変えた。ウォルター・ウォルトス会長兼CEOが引き続き全体を監督するが、3部門にそれぞれ社長が任命され、新体制がスタートしている。今回、新たにランカスター部門の社長に就任(昇格)したジョン・ディベラ氏(John DiBella)とウォルトスCEO(Walter Woltosz)に今後の戦略などを聞いた。

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 新生シミュレーションズプラスは、もともとの拠点であるカリフォルニア州ランカスター、コグニジェンのニューヨーク州バッファロー、ディリシムのノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク−の3カ所に分かれてオペレーションされている。

 ランカスター部門は、生物学的薬物速度論(PBPK)に基づく薬物動態(ファーマコキネティクス)シミュレーション、定量的構造活性相関(QSAR)ベースの物性予測などのソフトウエアを開発。コグニジェンは臨床データ解析や薬効評価のコンサルティングサービスを提供している。また、新たに加わったディリシムは、薬物性肝障害(DILI)に関するメカニズム論的数学モデルを開発している。薬物の投与が肝臓の損傷や再生に影響するメカニズムをシミュレーションするもので、12の製薬企業から組織された「DILI-simイニシアティブコンソーシアム」がその開発資金を提供しているという。

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 − 新生シミュレーションズプラスとして、全社売上に占める3部門の構成比はどんなイメージでしょうか。

 ウォルトス氏:おおむね、ランカスターが60%、コグニジェンが25%、ディリシムが15%といった構成になる。3社が合併し、社員数は約80人に増加している。

 − 3部門のシナジー、連携はどのようになりますか。

 ウォルトス氏:独自のモデリング&シミュレーション技術で、探索研究から非臨床、臨床試験領域まで、幅広いソリューションで網羅することができるようになった。コアになるのは、PBPKモデリングをベースに薬物の吸収などの体内動態を予測する「GastroPlus」と、数学的・統計的手法で化合物の物性や毒性などを予測する「ADMET Predictor」。すでに、コグニジェンがGastroPlusを利用して、臨床試験の効率的なデザインや実施を支援するサービスを行っているが、来年にはGastroPlusのシミュレーション結果を入力して、ディリシムの解析につなげる機能を実現する計画だ。シームレスに連携するので使いやすくなる。3部門のシナジーは今後も継続的に図っていく。

 − ランカスター部門を率いる新社長としての抱負を聞かせてください。

 ディベラ氏:このところ非常に業績が好調なので、まずはこれを壊さないことが第一だ。その上でいろいろな課題に取り組んでいきたい。とくに、いままではパブリケーションがうまくなかったと思う。ユーザー事例などももっと出したいし、顧客との議論も活発化させ、教育にも力を入れたいと考えている。次にソフトウエアだが、われわれの製品はサイエンス的には申し分ないが、ユーザーインターフェースはもっと洗練させる余地がある。顧客の意見を聞いて、ユーザーオリエンテッドなスタイルで進めたい。

 − 最近注目されている人工知能(AI)についてはいかがでしょう。どのように取り組みますか。

 ウォルトス氏:古いAI技術については19年前から取り入れており、ADMET Predictorでいくつかの手法を利用することが可能だ。それに加えて、今年夏からディープラーニング(深層学習)の開発に入っている。これは、学習用のデータセットの大きさがカギで、データが少ないと既存の予測手法と大差ないが、データが多くなるほどディープラーニングの方が予測精度が良くなることを確認している。

 ディベラ氏:最終的には、ADMET Predictorの中でディープラーニングを選択できるようにする予定だ。大手製薬企業は社内に大量のデータを持っているし、外部のデータベースを購入するなどしてデータを集めているところもある。ツールを使って自分たちで学習させようとするケースが多い。

 − ウォルトスさんは高齢を理由に今回を最後の訪日とするおつもりだと聞きます。最後にコメントをいただけますか。

 ウォルトス氏:1998年に初めて来日して以降、今回が50回目の訪問になる。日本での滞在期間は、通算すると、まる2年ほどにも及ぶ。本当に美しい国で、いろいろなところを楽しんだし、多くの方にお世話になった。深く感謝するとともに、引き続きわれわれの技術を通して顧客のみなさんの成功をサポートしていきたいと考えている。

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<関連リンク>:

シミュレーションズプラス(トップページ)
http://www.simulations-plus.com

ノーザンサイエンスコンサルティング(国内代理店のトップページ)
http://www.northernsc.co.jp


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