日本ディープラーニング協会が旗揚げ

AIの産業応用へ破壊的な変化、3万人の技術者育成

 2017.10.06−日本ディープラーニング協会(JDLA)が4日、正式に旗揚げし、その組織や活動内容などについて記者会見した。理事長に就任した東京大学大学院工学系研究科の松尾豊特任准教授は「人工知能(AI)は1960年代から連続的に発達してきたが、機械学習におけるディープラーニング(深層学習)は2010年代に登場するや破壊的な変化をもたらした。この技術を早くキャッチアップして、日本全体の産業競争力強化につなげなければならない」と強調。深層学習に関する正しい理解を広め、それを開発、または企業で活用できる人材育成を急ぐ方針を示した。

 JDLAの正会員企業は、ABEJA、ブレインパッド、FiNC、GRID、IGPIビジネスアナリティクス&インテリジェンス、エヌビディア、PKSHA Technology、STANDARD、UEI、クロスコンパス、zero to one−の11社で、大学などの学識者ら7名が有識者会員、さらにトヨタ自動車が賛助会員に加わっている。AI/ディープラーニングに関わるベンチャーが主体の組織で、事務局を東京都港区虎ノ門4-1-20、田中山ビル10階のABEJA内に置いている。

 活動で注目されるのは、ディープラーニングの資格制度をスタートさせること。これには、ディープラーニングを実装するエンジニアの技能を認定する「E資格」(エンジニア資格)と、ディープラーニングを事業に生かすための知識を有しているかを検定するビジネスマン向けの「G検定」(ジェネラリスト検定)の2種類がある。それぞれ、2020年までに3万人と10万人を育成することを目標としている。

 G検定は11月17日から申し込みを受け付け、初回試験を12月16日に実施する。試験は自宅からでも参加できるオンライン方式で、受験料は1万2,960円(学生は9,720円)。一方、E資格は会場(まずは東京・大阪)での試験となり、来年4月の実施を計画している。受験料は3万2,400円。こちらは、JDLA認定プログラムを修了していることが受験資格となる。今後、JDLAが提供するシラバスをもとに高等教育機関や民間事業者が実施する教育プログラムを事前に受けていることが必要。

 JDLAではこれ以外にも、カンファレンスやワークショップを開催して、ディープラーニングを産業界で活用するための情報提供を行うほか、AIへの過剰な期待や過大な不安を避けるために社会に対して正しい情報を発信、さらに海外の機関との交流・連携も進めることにしている。

 松尾理事長によると、ディープラーニングによってAIが“目”を持つようになったことが非常に重要だという。「画像認識はコンピューターが苦手な分野で、人間の目の精度を超えることは数十年間、実現できなかった。ところが、ディープラーニングはそれを一気にくつがえし、いまでは人間の目を上回っている。従来の工場では、決められたラインの上では作業を自動化できたが、これからは人間が目を使って認識・判断しなければならなかった仕事も機械で自動化することが可能。これこそ、ものづくり技術に長けた日本が率先してものにしなければならない領域だ」と述べる。

 考えられる応用分野としては、農業での収穫や選別作業、建設での測量・掘削・基礎工事・外装内装作業、食品加工の洗浄・皮むき・カット作業、生産現場で段取りの自動化やセル生産の自動化などが期待できるほか、医療や介護、警備・防犯、防災監視、自動操縦、極限環境における廃炉作業など、さまざまな可能性があると指摘している。

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<関連リンク>:

日本ディープラーニング協会(トップページ)
http://www.jdla.org/


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