NVIDIAがヘルスケア領域で事業拡大

医用画像処理・画像診断などでGPU活用、専用スパコンClara提供も

 2018.05.12−NVIDIA(エヌビディア)は9日、ヘルスケア領域における事業の概況と戦略に関する記者説明会を都内で開催した。とくに、医用画像処理や人工知能(AI)/深層学習(ディープラーニング)による診断などで、GPU(グラフィックプロセッサー)を利用した計算ニーズが拡大する傾向にあり、すでに超音波やX線CT(コンピューター断層撮影)、MRI(核磁気共鳴断層撮影)などの装置メーカーとの協業が広く進んできている。同社では、AIによる画像診断により需要がさらに伸びると判断、今年の春に医用画像診断スーパーコンピューター「Project Clara」をアナウンスした。ヘルスケア事業担当のキンバリー・パウエル(Kimberly Powell)副社長は、「日本の医療機関には高度な医用画像装置が導入されている一方、世帯当たりの放射線科医の人数は世界的にも少ないという調査結果がある。Claraの導入で日本のより良い医療に貢献したい」としている。

 パウエル副社長の説明によると、医用画像関係の計算処理量はこの6年間で10倍に伸びており、画像再構成や可視化といった処理に加えて、今後はAIでの計算量が大きく増える見通しだという。また、同社では、AI関連の新興企業を支援する「インセプションメンバーズ」プログラムを推進しているが、そのメンバー2,800社(2年間で10倍に増加)のうち300社がヘルスケア領域。とくに、医用画像関係のベンダーが多い。

 現在、グローバルには約300万台の医用画像装置が稼働中だが、年間に導入される新型機の数は数十万台規模であり、装置の更新サイクルが長いのがこの市場の特徴になっている。このため、既存の装置群を生かして高度な機能を実現させようというのが、Project Claraの狙い。「Claraと組み合わせることで、古い装置をアップグレードして新しい機能を提供することができる。画像の品質は処理量を増やすだけで向上するし、AIによる新しい機能を提供することも可能」とパウエル副社長。「これだけのことをするには、15年前なら1,000万ドルのスーパーコンピューターが必要だったが、いまは数個のGPUで足りる」と述べる。

 Claraは、仮想GPU環境で多数の演算ワークロードを実行することができ、リモートからの活用も可能。医用画像装置に組み込みで利用することができるほか、病院内あるいはクラウド上のデータセンターで動かすなど柔軟な運用が行える。しかも、GPUのアーキテクチャーが統一されているため、ハイブリッドでの運用も容易。古い医用画像装置を仮想GPUスパコンに接続して画像処理をグレードアップするとともに、最新のAIアルゴリズムを共用できるというメリットがある。

 パウエル副社長は、「インセプションメンバーズには、おもしろいスタートアップ企業がたくさんあるので、それらを日本市場に紹介することもできれば……」と話している。

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<関連リンク>:

NVIDIA(トップページ)
http://www.nvidia.co.jp/

NVIDIA(テクノロジーブログ:Project Clara)
https://blogs.nvidia.co.jp/2018/04/06/ai-healthcare-gtc/


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