日本マイクロソフトがヘルスケアクラウドで攻勢へ

3年後に売り上げ1.5倍に拡大、AIなど先端高度技術も提供

 2018.09.04−日本マイクロソフトは4日、ヘルスケア(医療・製薬)分野における取り組みについて、都内で記者説明会を開催した。「マイクロソフトが提供するヘルスケアクラウド」として、セキュアで国内法規に対応したクラウド基盤を整備するとともに、医療現場の働き方改革を支援する各種ツールの提供、人工知能(AI)活用など先端技術の医療・創薬への活用など、ヘルスケアのさまざまなニーズにマッチしたソリューションをパートナーとの連携によって実現していく。現在、同社のヘルスケア領域におけるクラウド化比率は約4割だが、3年後にこれを7割に高め、全体の売り上げを1.5倍に拡大させる目標を立てている。

 同社は、2005年に専門組織のヘルスケア準備室を設立。現在では、パブリックセクター事業本部の医療・製薬営業統括本部がこの分野を担当している。これまでの実績としては、国内の製薬企業上位10社のAzure利用率が100%、国内の中規模以上の病院でのWindowsおよびSQLサーバーの利用率が99%、同じくMicrosoft 365契約者数が35万人にのぼっているという。

 クラウド基盤としては、グローバルおよび国内の規制に対応した認定を取得しており、製薬会社などが従う必要があるCSV(コンピューター化システムバリデーション)についても、今年4月にパートナー(TIS、アバナード、JSOL、NTTデータ)と共同で「Azure対応CSV適用リファレンス」を作成している。電子化された医療情報をクラウドで扱うための「3省4ガイドライン」(厚生労働省の『医療情報システムの安全管理に関するガイドライン』、総務省の『ASP・SaaS における情報セキュリティ対策ガイドライン』『ASP・SaaS 事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン』、経済産業省の『医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン』)にも対応している。

 実際のところは、これらに対応することはクラウド事業者にとって必須要件となっており、その意味では他社クラウドとの差別化にはならないが、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)による「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」に対し、クラウド情報セキュリティ監査制度のCSゴールドマーク認証で対応できる体制があるのは同社だけだとしている。

 また、医療関係者らの働き方改革をクラウドでサポートできるのも、他のクラウド事業者と比べたアドバンテージになるという。今回の記者説明会では、実際の導入事例として済生会熊本病院が取り上げられた。Microsoft Teamsを活用することにより、電子メールを使っていた時代とはコミュニケーションの仕方が大きく変わり、余裕のある働き方ができるようになったとしている。熊本地震で病院内のサーバールームに大きな被害が出たことも踏まえ、クラウドへの移行を検討しているということだ。

 さらに、同社のクラウド基盤上で医療分野を対象とした先端高度技術が開発されており、パートナーを通して内外で実績が拡大していることを強調。実例として、コンピューター断層撮影画像から自動的にヒトの臓器の三次元CGを生成するHealthcare NExTの「InnerEye」、およびこの技術を利用して糖尿病網膜症の画像診断支援システムを開発したiris社のシステムを紹介した。これは、FDAの認可を受けて、実際に医療現場で使用されており、正答率96%を実現しているという。

 複合現実(ミックスドリアリティ)製品「Microsoft HoloLens」の活用事例では、オハイオ州のウエスタンリザーブ大学で解剖学の研修に使用されているほか、Holoeyes社の手術シミュレーションシステムなどの事例がある。加えて、エムアイティーとナレッジコミュニケーションが実施している実証実験も紹介された。これは、タンパク質の抗原部位を予測するエピトープ解析を自動で行うシステムで、HoloLensとAzureの組み合わせにより、3Dモデルを遠隔地の研究者同士が共有して、抗体医薬開発を効率的に進めるというもの。

 こうした高度技術の活用を推進するため、同社は10月1日付けで「デジタルヘルス推進室」を設置、グローバルに研究開発を進めているAI/IoT/ビッグデータなどの技術を国内市場に反映させていく。グローバルな知見や先進事例を集約しつつ、日本の医療に貢献できる活動を行っていくという。








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<関連リンク>:

日本マイクロソフト(パブリックセクター向けポータル)
https://www.microsoft.com/ja-jp/business/publicsector

日本マイクロソフト(ヘルスケアソリューションのページ)
https://www.microsoft.com/ja-jp/business/publicsector/solution/search.aspx?pgt=medical

日本マイクロソフト(Azure紹介ページ)
https://azure.microsoft.com/ja-jp/


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