2018年冬CCS特集:化学情報協会

AI応用し合成ルート予測、27万の反応ルールを搭載

 2018.12.04−化学情報協会は、米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)が提供している科学情報検索ツールのプレミアム版「SciFinder-n」の普及を加速させる。とくに、ポイントになるのが合成ルート予測機能。人工知能(AI)を利用した反応経路予測のためのエキスパートシステムで、27万以上の反応ルールに基づく知識ベースを搭載している。すでにこの機能に対する問い合わせが増えてきており、今月から一部ユーザーによるテストがはじまる。来年にはすべてのユーザーで利用可能になる予定だ。

 SciFinder-nは、現場の研究者が活用できる検索ツールとして実績豊富なSciFinderを強化したサービス。検索結果が独自の関連度に基づいてスコアリングされ、研究者が知りたいと思っている回答が上位にくるように工夫されている。また、SciFinderではオプションだったPatentPak(特許明細書の参照)、MethodsNowシンセシス(詳細な合成手順を表示)が標準となっており、情報検索の効率性や使いやすさが大幅に高まっている。

 今回、新たに追加される合成ルート予測機能は、学術出版のジョン・ワイリー・アンド・サンズが製品化しているChemPlannerを機能強化したもの。CASが持つ2,000万件の反応データを利用することで、27万の反応ルール(オリジナル版は約3万)を抽出している。

 この機能をオンにすると、反応検索を行った際、通常の反応データベースでヒットしたルートと、逆合成による予測反応ルートの両方を表示することが可能。また、既知の反応検索でヒットしなかった場合、予測検索で前駆体を探し、そこを起点に反応検索を再度行うことにより、目的の生成物に至るルートを複数探索することができる。前駆体への逆合成は、反応の分子効率が優れていたり(構造上のムダが小さい)、前駆体が均等なサイズに分割されたりする反応を高くスコアリングすることも可能となっている。

 国内では、今年4月に大日本住友製薬がSciFinder-nの5年契約に切り替えたほか、大学で最初のユーザーとして10月に兵庫県立大学が新規契約を結んだことが発表された。世界では、この1年ほどの間に300機関以上が採用しており、CASの当初の予測を上回るペースで普及が進んでいるという。化学情報協会でも、新規の紹介はSciFinder-nをすすめているということだ。


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