2018年冬CCS特集:ウェイブファンクション

分子設計ソフト最新版発売、NMR構造決定機能強化

 2018.12.04−ウェイブファンクションは、分子モデリングソフトの最新版「Spartan '18」をリリースした。計算化学のビギナーやベンチケミストから、企業や大学における本格的な研究用途まで幅広く扱えるシステム。国内でも、保守ユーザー向けにWindows版の提供が先行して開始されているが、来年春にかけて順次、Mac版とLinux版もリリースされる。一般向けのパッケージ販売も来年から行われる予定だ。

 Spartan '18の製品構成は、シングルコア版(スタンダード)と16コアまでの並列処理が可能なパラレルスイート版、さらにコア数に制限がないパラレルスイート・アンリミテッド版に分かれる。Spartan自体は、量子化学計算エンジンを組み込んだグラフィカルな分子モデリングソフトとして、世界で累計10万以上の導入実績があり、操作がわかりやすいため国内では大学や高専などの教育用途に使われることが多く、研究開発に計算化学を取り入れようとする企業向けのエントリーシステムとしても人気が高い。

 一例として、昨年から和歌山県工業技術センターが進める“オープンラボ整備事業”(地域創生加速化交付金)で活用できる貸付機器として提供されており、県内の企業から安定した利用があるようだ。

 さて、最新版のSpartan '18は、中枢にある量子化学計算エンジンが刷新され、密度汎関数法(DFT)などの機能が強化されたことが特徴。新しい関数が多数追加され、最新の理論で高度な計算を行うことが可能。また、配座解析機能が大幅に向上しており、大きな環構造(六員環以上)をもつなどの複雑な配座でも、量子化学の手法を加えるなどして効率良く探索することができる。

 さらに、NMR(核磁気共鳴)を利用した構造決定を支援する技術では、統計的な方法を用いるDP4アナリティクスを採用したほか、Spartanのヘビーユーザーである弘前大学の橋本勝教授らのグループと共同研究した成果が“計算レシピ”として組み込まれた。これは、分子量が大きく配座の自由度が高い天然物のための計算手法で、高速な分子力学と高精度な量子化学を使い分けながらエネルギー計算と構造最適化計算を繰り返して候補を絞り込み、最終的に量子化学でNMRの化学シフトを求める。実際にはかなり複雑な計算だが、一連のプロトコルがレシピになることで手軽に使用することができる。昨年から学会発表も行われてきており、ユーザーの関心も高まっている。


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