2019年冬CCS特集:モルシス

PROTAC対応で注目、MI用機械学習データ生成も

 2019.12.03−モルシスは、菱化システム(現在の三菱ケミカルシステム)からCCS事業を承継して3年目を迎え、順調に事業を発展させている。生命科学系は統合計算化学プラットフォーム「MOE」(加CCG)、材料科学系は材料設計支援統合システム「MedeA」(米マテリアルデザイン)、「COSMOtherm」(ダッソー・システムズ)、「ADF」(蘭SCM)などの柱となる製品が確立しており、その機能の充実や発展も目覚ましい。

 生命科学系の主力の「MOE」は1997年以来の歴史あるソフトだが、時代に合わせた計算化学/モデリング手法を取り入れて常に最先端の機能を提供してきた。最近では、抗体やペプチドなど医薬の新しいモダリティに対応した機能が注目を集めている。とくに最近、PROTAC(タンパク質分解誘導キメラ分子)のメカニズムに着目したインシリコモデリングを可能とするツールを提供開始した。細胞内の標的タンパク質を選択的に分解・除去する機能があるため、強力な阻害活性を持つとして注目されているもので、従来の手法では対応しにくいアンドラッカブルなタンパク質をも標的にできるとして注目されている。PROTACを介した独特の三元複合体構造を予測しモデリングすることができる。

 また、MOEについて、同社は国内だけでなくアジア市場もカバーしており、中国や韓国にも代理店を設けている。以前は大学関係が多かったが、台湾やシンガポールも含め、最近はバイオベンチャーなど民間での導入も増加。MOE事業の10%は海外からの売り上げになっている。

 生命科学系では、「OFF-X」(スペインのバイオインフォゲート)への関心も高い。医薬品とそのターゲットに対する前臨床毒性、および臨床試験における有害事象に関する統合ポータルサービスであり、1万4,000のターゲットに関する44万件の安全性情報を収集・整理・統合している。情報量が多いだけでなく更新も速いことが特徴で、探索研究からファーマコビジランスまで、幅広いステージで活用できる。ケモターゲットの予測プラットフォーム「CLARITY」も安全性評価に役立つシステムで、化合物の構造からターゲットや作用機序、代謝物の予測などを行うことが可能。予測のもとになるデータが充実していることが利点で、データベースとしても有効だ。

 一方、材料科学系の「MedeA」はマテリアルズ・インフォマティクス(MI)で注目されており、今年ウィーンで開催されたユーザー会でも、シミュレーション結果を機械学習に利用するという話題で持ちきりだったという。とくに、ハイスループットモジュールを使用することで効率良く学習データを生成することができる。MedeAからは第一原理計算も分子動力学計算も可能だが、さまざまな物性値を算出できる分子動力学計算の人気が高まっているということだ。


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