2019年冬CCS特集:ウェイブファンクション

ユーザー会を初めて開催、天然物の構造決定で並列計算

 2019.12.03−ウェイブファンクションは、分子軌道法をベースにした分子モデリングシステムの最新版「Spartam '18」を販売中。Windows、Mac、Linuxとプラットフォームを選ばずに利用でき、マルチコア環境で高精度な計算を実施することも可能。本格的な機能を備えながら、ユーザーインターフェースはわかりやすく、大学や高専などの教育用途でも幅広い実績を築いている。

 Spartan '18は、シングルコア版と16コアまで使用可能なパラレルスイート版、コア数無制限のパラレルスイートGt16−の3パッケージが用意されている。とくに、Gt16版の並列処理性能を評価するため、日本支店内に最新の計算機環境を導入している。機能面では、弘前大学の橋本勝教授らとの共同研究に基づく“計算レシピ”機能の注目度が高い。これは、分子量が大きく配座の自由度が高い天然物の構造決定を行う技術で、高速な分子力学と高精度な量子化学を使い分けながらエネルギー計算と構造最適化計算を繰り返して候補を絞り込み、最終的に量子化学でNMRの化学シフトを求める。本格的に行うためには計算リソースが必要で、Gt16版の能力が生かせる用途になりそうだ。

 さて、同社では今年11月に初めてのユーザー会を開催した。米カリフォルニア大学アーバイン校の名誉教授であるヒーリー社長に加え、弘前大学の橋本勝教授、東京農業大学の勝田亮准教授、東京大学の滝川浩郷教授、横浜市立大学の及川雅人准教授らSpartanファンの先生方が講演。大学教員や学生、企業の研究者など30人近くが参加した。

 参加者からは、材料科学への応用例や物性値計算について知りたい、遷移状態の解析や反応機構について詳しく学びたい、人工知能(AI)への展開の展望を聞きたい、今回は有機化学者の講演が多かったのでもっと計算の中身に踏み込んだ講演を希望したいなどのコメントが寄せられた。次回ユーザー会への参加についても、100%好意的な意見が得られたため、同社としては定期的に開催していくことを検討したいということだ。


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