AWSがクラウドVPNでシオノギグループのテレワーク実現

同時接続数拡張で業務円滑に、新型コロナ対策で支援サービス提供

 2020.04.25−アマゾンウェブサービス(AWS)は23日、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で企業が業務を継続するためのリモートワーク支援サービスに関する記者説明会をウェブで開催、その中で同社のクラウドVPN(バーチャルプライベートネットワーク)がシオノギグループのテレワークを実現した事例を紹介した。全社テレワーク初日に判明した問題を解決し、わずか3日間でアマゾンへの切り替えに成功したという。

 「AWS Client VPN」は、AWS上に配置されたVPNエンドポイントを経由し、オンプレミス内のシステムへのセキュアな接続を可能にする。塩野義製薬およびシオノギグループ全社のIT機能を受託・運営するシオノギデジタルサイエンス(中井康司社長)がこれを採用した。シオノギグループでは、今回の緊急事態宣言を受け、対象都市の従業員の在宅勤務を開始。オンプレミスに設置しているVPNルーターのチャンネル不足が懸念されたが、実際に4月8日の在宅勤務の全社拡大初日に業務遂行の障害としてこれが顕在化した。リードタイムが短いことを最重視して代替案を検討した結果、浮かび上がったのが「AWS Client VPN」だったという。

 すでに、メインデータセンターとダイレクト接続されていた既存AWS基盤を利用することで、実質3日間で構築・検証・ユーザー展開準備を済ませ、約100人のパイロットユーザーへの提供と動作検証を完了させた。4月13日からは実ユーザーへの拡大を順次開始している。これまでのVPN環境の約4倍の同時接続数のキャパシティを確保したことで、国内のシオノギグループの在宅勤務ニーズをおおむね満たせるようになったとしている。

 「AWS Client VPN」は、ユーザー需要に合わせて利用可能な接続数を自動的にスケールアップまたはスケールダウンさせる機能がある。クラウド内で実行されるため、ハードやソフトのVPNソリューションをインストールする必要もない。

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 AWSが提供するリモートワーク支援としては、仮想デスクトップサービス「Amazon WorkSpaces」と、コンテンツコラボレーションサービス「Amazon WorkDocs」の組み合わせによって、業務に使用するPC作業環境を実現することが可能。「Amazon WorkSpaces」は1台からでも、数分でスタートでき、初期費用ゼロで使った分だけの課金という特徴がある。自宅などのパソコンでWorkSpacesクライアントソフトを起動し、認証情報を入力するだけで、いつでも自分のデスクトップ環境を呼び出すことが可能。ブラウザー内でアプリケーションを操作することもできる。手元のPCやデバイスには作業したデータが残らないのでセキュリティに優れており、証明書によるデバイス認証など企業のセキュリティ要件に合わせることも容易である。利用できる仮想CPUの数やメモリーサイズ、GPUの利用など用途に応じて柔軟にパフォーマンスを設定できる。また、「Amazon WorkDocs」は安全なフルマネージド型のファイルストレージで、ブラウザー上でドキュメントを共同で編集したり、オフィスソフトと連携したりすることも可能となっている。

 新型コロナウイルス対応として、6月末までの間、新規顧客に対して最大50個の「Amazon WorkSpaces」のバリュー、スタンダード、パフォーマンス(上位にパワー、パワープロ、グラフィックス、グラフィックスプロの設定がある)バンドルを無料で提供。「Amazon WorkDocs」も同様に無料で提供(最大50人のユーザーごとに1テラバイトのストレージ付)する。

 仮想コンタクトセンターの「Amazon Connect」は、クラウド上にコンタクトセンターシステム(PBX)を構築し、仮想デスクトップと併用することで、いつでもどこからでも業務を実行することができる。SalesForceと連携するコンタクトセンターを簡単に構築することも可能。こちらも、新型コロナ対策として無料利用枠を拡大している。

 リモートでのコミュニケーションとコラボレーションに利用できるのが「Amazon Chime」。オンラインミーティング、音声&ビデオ会議、ビジネスチャット機能を統合したもので、ユーザー権限の設定や監査ログの収集など、ビジネス用途で利用できる管理機能も充実している。ブラウザーへのアドイン・ダウンロード・インストール不要で、簡単に会議を開始できる。最大250人が同時接続する大規模な会議を開催することも可能。新型コロナ対策としては、初めて利用するユーザーすべてに6月末までPro版の機能を無料で提供することにしている。

 デスクトップアプリケーションを任意のコンピューターのブラウザーに配信する「Amazon AppStream 2.0」は、既存アプリケーションを変更せずAWS上にインポートして、ユーザー数無制限で世界中にストリーミングすることが可能。インフラの導入管理は不要であり、1ユーザー/1インスタンスによる一貫したパフォーマンスで、いつものWindowsアプリケーションをブラウザーで利用できる。新型コロナ対策として、1ヵ月当たり40時間の無料使用を許可している。

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<関連リンク>:

AWS(リモートワーク支援のページ)
https://aws.amazon.com/jp/remote-work-learning/


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