ダッソー・システムズがAI創薬の「GTD」提供を開始

期間・費用を半減、要求特性の多目的最適化を実現

 2020.08.26−ダッソー・システムズは、人工知能(AI)創薬ソリューションのリリースを開始した。「ジェネレーティブ・セラピューティック・デザイン」(GTD)の名称で昨年半ばから開発を進めてきたもの。化合物ライブラリーを大量に発生させ、多目的最適化(活性や溶解性、毒性など)を実現する機械学習モデルを通して有望な候補を選定し、いくつかは実際に合成してその知見を機械学習にフィードバックさせる。創薬研究にかかる期間と費用を半減させることができるという。

 GTDは当初、コンソーシアム形式での開発を志向したが、同社の3DEXPERIENCEプラットフォーム上で製品のリリースが行われており、PipelinePilotをベースにして、各種機能の組み込みやシステム間連携が順次図られている。具体的には、管理ツールの「Innovation Design and Decision」のほか、「Discovery Studio」でのファーマコフォアのスコアリングやドッキング解析、「QSARワークベンチ」を使ったGTD用モデルの自動構築などの機能が提供されている。

 バーチャル空間で数万〜数百万の化合物を発生させ、機械学習モデルで複数の要件を満たす化合物をフィルタリングして選択することを繰り返し、いくつかは実際に合成してその結果をフィードバックして再度サイクルを回す。化合物の発生アルゴリズムは、マッチドモレキュラーペア(MMP)、古典的な反応式ベースの構造変換、環構造の変換などに対応。要求特性の多目的最適化は、4〜5つくらいまでは容易だが、8〜10になると難しく、さらに改良を加えているという。

 今後、「Insight」を利用した化合物情報やアッセイデータの登録、データ解析と可視化が行えるようにする。また、モデル作成を自動化する新しいユーザーインターフェース、バーチャルとリアルのデータ解析・可視化、逆合成解析、「ONE Lab」ソリューションとの連携による最適なラボへの合成やアッセイ試験の割り当てなども可能にしていく。基本的に、AIや機械学習の専門的な知識を必要とせず、一般的な研究者が操作できるシステムを目指していくという。

 事例としては、アカデミックではmGluRレセプターに対し、Sanford Burnham Prebys Insutituteと有効性と選択性、溶解性で、パリ大学とは有効性とADME特性で共同研究を実施。民間とは、米国のメジャーファーマとの間で消化管系医薬品を対象に5つの多目的最適化(リードジェネレーション)、別の米国メジャーファーマと中枢神経系領域で11個の多目的最適化(リードオプティマイゼーション)、欧州中堅ファーマと心血管分野で10個の多目的最適化(リードオプティマイゼーション)、別の欧州中堅ファーマと糖尿病治療薬で4つの多目的最適化(リードジェネレーション)を実施した。消化管系のメジャーファーマとの研究は、溶解性の向上が課題になっていたが、合成とアッセイを4回繰り返すだけで目標に到達した。ケミカルスペースの中でどの領域を攻めるか、新たに合成すべき分子について想像力が刺激され、サイクルを回すたびに全体の質が向上するという実感が得られたということだ。

 一般的には創薬研究に6年をかけ、4,000化合物を合成して、8億ドルの費用を投じているが、GTDソリューションを利用することにより、これが3年間/1,000化合物/4億ドルに削減されるとしている。

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<関連リンク>:

ダッソー・システムズ(BIOVIAブランド紹介ページ)
https://www.3ds.com/ja/products-services/biovia/?woc=%7B%22brand%22%3A%5B%22brand%2Fbiovia%22%5D%7D


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