2020年夏CCS特集:富士通九州システムズ

外部連携・MIなど強化、製薬企業からもデータ提供

 2020.07.15−富士通九州システムズは、材料研究開発および生命科学研究における計算化学活用を支援するプラットフォームを提供。自社パッケージ製品の開発力を生かして国プロジェクトにも参画し、その成果を商用化する取り組みも積極的に行っている。新型コロナウイルス感染が広がる中でデジタルでのプロモーション活動に力を入れており、ホームページを刷新し、製品別に情報をみやすく提供できるようにしたほか、YouTubeの活用、リモートでのセミナー・トレーニング実施などに取り組んでいる。

 同社は、富士通やモルシスとの協業を通して幅広いCCS製品群を取り扱っているが、主力は自社製品で、とくに計算化学統合プラットフォーム「SCIGRESS」が好調。アカデミックをはじめ企業向けにも実績が拡大した。6月に発売されたばかりのバージョン3は、外部の計算エンジンとの連携を強化したほか、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)での活用を念頭に置き、構造物性相関(QSPR)での物性予測機能を搭載している。

 外部連携では、Quantum ESPRESSOのNEB(ナッジドエラスティックバンド)計算に対応。初期構造と最終構造(中間構造)を入力することで、構造の変化にともなう全エネルギー変化を計算できるようになった。構造の変化とその時のエネルギーを対応させて確認することで、反応障壁や反応経路を考察できる。また、フォノン計算にも対応し、ラマンスペクトルを予測することが可能。さらに、LAMMPS、Quantum ESPRESSO、GAMESSの計算実行時に入力ファイルをGUI上で編集する機能が追加された。標準の手順よりも柔軟かつ詳細に計算設定を行うことができる。

 新しいQSPR機能は、シミュレーション結果をもとにモデル式の作成を行い、物性予測を実行するまでの一連の機能を統合したもので、計算で求めた誘電率や弾性定数、分極率などを記述子として利用することが可能。

 一方、日本医療研究開発機構(AMED)の創薬支援推進事業「創薬支援インフォマティクスシステム構築」での共同研究成果を「新ADMEWORKS」(仮称)として製品化する計画も進めている。化学構造式から薬物動態や毒性を予測するためのインシリコスクリーニングシステムで、民間製薬企業7社から提供された2万4,300化合物のデータをもとにした予測モデル(溶解性、代謝安定性、血漿タンパク結合、hERG阻害)が含まれていることが最大の特徴。外部のシステムとも統合できるように設計されている。来年1月にリリースすることが決定しており、学習手法の追加や薬物血中濃度予測との連携など、継続して機能強化を図っていく。血中濃度予測が実現すれば、同社の薬物相互作用シミュレーター「DDI Simulator」への入力とすることができるようになる。

 そのほか、薬物動態データを網羅的に集めた「ADMEデータベース」は、現在のオンライン検索サービスの形態から、8月にもコンテンツ販売形態に移行する計画。データを一括して取り込んで機械学習などを行い、モデル構築に利用したいというユーザーの声に応えるかたちになるようだ。


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