2020年冬CCS特集:ブルカー

富士通・日立と販売契約、バイオ系作図ツールを製品化

 2020.12.02−核磁気共鳴装置(NMR)大手のブルカーは、米アークスパンの買収やスペインのメストレラボへの出資などを通し、CCS関連のソフトウエア事業を強化している。実験データの測定から管理、機械学習などへのデータ活用まで、ラボ全体のデジタル化へ向けて統合的な機能を実現しつつあり、国内での導入事例も着々と増加してきている。

 クラウドベースのインフォマティクスプラットフォームである「Arxspan」は、電子実験ノート、化合物・生物情報管理、アッセイデータ管理、試薬管理、データ解析ツールなどの機能を統合。当初は、製薬会社が外部のCRO(医薬品開発受託機関)とのデータの受け渡しに使うなどの用途が多かったが、最近は社内システムをクラウドに移行し、全体をArxspanで一元化するケースが増えている。とくに、低分子を前提に設計されたシステムとは異なり、抗体医薬、薬物複合体、細胞、タンパク質などの取り扱いが容易で、創薬モダリティに対応しやすいことで評価が高い。

 高まる需要に対応するため、このほど同社では国内の2社と代理店契約を結んだ。富士通と日立医薬情報ソリューションズで、強力な布陣となりそう。富士通は電子ノートの導入実績で国内トップのベンダーで、CCS事業でも最古参。日立医薬情報ソリューションズは、関東・関西の大手製薬会社との共同出資でスタートし、製薬会社向けIT基盤の開発・運用・保守で15年の実績がある。どちらも先方からのアプローチがあり契約したもので、すでに具体的に動いている案件もあるという。

 一方、Arxspanファミリーの新製品として、バイオ系作図ツール「BioSpin」が開発されている。来年早々にもリリースされるが、HELMを含む20種類のバイオ系ファイルでプラスミドマップやシーケンスデータを読み込み、さまざまな情報を可視化したり編集したりすることが可能。ただの絵ではなく、モノマーを定義してペプチドをつくることもできる。同種のソフトがあまりみられないため、来年後半には単独の製品としてパッケージ販売することも検討しているということだ。

 さらに、メストレラボの「MGears」との連携・統合機能として、Arxspanで分析依頼を作成し、その依頼にIDを付与、MGearsがIDに基づいて分析結果を自動的に回収し、データ解析を自動で実行、その結果が電子ノートに自動的にアップロードされる。分析機器はNMRのほか、質量分析計(MS)、ガスクロマトグラフ(GC)、液体クロマトグラフ(LC)など、メーカーを問わず対応可能。すでに英国の顧客で実際のシステムが稼働しており、来年から国内でも本格展開を図る。


ニュースファイルのトップに戻る