2021年夏CCS特集:ブルカー

クラウド上でデータ共有、ラボ内のワークフロー自動化

 2021.06.29−核磁気共鳴装置(NMR)などを中心とした分析および診断ソリューションを提供しているブルカーは、米アークスパンの買収やスペインのメストレラボへの出資などを通し、ソフトウエア事業を強化。ラボのデジタル化や自動化を推進することで、ソリューションの価値をさらに高めている。国内では、富士通と日立医療情報ソリューションズが代理店として活動している。

 クラウドベースの研究情報プラットフォームである「Arxspan」は、複数の企業や機関がコラボレーションしながら研究するスタイルを前提に開発されたシステムで、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を介してオンプレミスのアプリケーションともつながる柔軟性を持っている。具体的には、電子実験ノート、化合物・生物情報管理、アッセイデータ管理、試薬管理、データ解析などの機能がクラウド上で統合されており、ユーザーやグループごとにセキュリティレベルを自由に設定して、安全かつ自在に研究データを共有することが可能。

 メストレラボの「MGears」との連携によって、分析を依頼してからその結果を回収して機器データを処理・解析し、最終的に電子ノートにデータ登録するまでのプロセスを自動化できるワークフローを実現している。今年4月にリモートで行われたユーザー会では、医薬品向けのプロセス開発などを受託するCatSci社から導入事例が発表された。データ駆動型の研究を行うことを重視しており、いかに早く正確な情報を集めるかに苦労していたという。化学者は1つのソフトを使用するだけでデータを扱うことができ、過去データのマイニングやデータインテグリティの点でも大きなメリットがあったとしている。

 一方、新しい製品や機能の開発では、創薬モダリティに対応した分子生物学向け作図ツール「BioDrive」が提供開始されている。Arxspanの各アプリケーションから追加費用なしで呼び出して使用することが可能。定番のツールが市場にないために自作したということで、年内にはスタンドアロンのパッケージソフトとして製品化することも検討している。

 また、蓄積したデータを機械学習に利用したいというニーズには、「パブリッシャーツール」が注目されている。あらかじめデータフィールドを指定しておくと、電子ノートなどからデータ更新が行われた際に、自動的に差分データを抜き出してデータ転送してくれるという機能。面倒な手作業を自動化したもので、いつでもデータセットを最新にできるため好評を得ている。


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