2021年夏CCS特集:日立ハイテクソリューションズ

前準備なしにMIを実施、掛け合わせ探索で新材料発見

 2021.06.29−日立ハイテクソリューションズは、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)をすぐに実施できるSaaS(サービスとしてのソフトウエア)形式のサービス「Chemicals Informatics」を製品化し、提供を開始している。1億以上の公開データを中心に、文献や特許を読み込んだ学習ずみの人工知能(AI)となっており、目的の特性や機能を満たす化合物を前準備なしで探索することができる。

 同社は、AIソリューションで実績が豊富。その関係から、3年ほど前にある化学メーカーとの間でMIプロジェクトが立ち上がり、共同開発した成果をベースに今回のシステムを製品化した。昨年11月に発表して以降、かなりの反響があり、多数の引き合いが寄せられているという。

 MIでは、データの準備で手間取ることが多いため、最初からデータベースを備えていることは「Chemicals Informatics」の大きな利点だといえる。独自の自然言語処理(NLP)を利用して1億以上の化合物・論文・特許データを抽出したほか、独自の新規化合物生成AIによって創出した化合物情報を盛り込んでMI用データベースを整備している。情報は半年ごとにアップデートするほか、InChI式を使うことで自社データを用いた探索も可能となっている。

 材料探索を行う際には、独自の掛け合わせ探索手法を備えたAIプログラムを利用する。特許出願中のこの技術は、DNAの掛け合わせと突然変異を組み合わせた生物進化を模した手法で、いままでの発想にない未知の領域の有望化合物を探索することが可能。ユーザーは、既知の化合物の周辺だけでなく、新規構造やカスタム構造の化合物の周辺やそれらを掛け合わせた空間から、望ましい特性の化合物が存在する領域を調べ上げることができる。異なる特性を持つ化合物を掛け合わせるなど、探索範囲は柔軟で幅広い。

 今後は使いやすさをさらに追求するほか、予測できる物性値をさらに増やしていく計画。基本的に、今回の「Chemicals Infomatics」は、MI研究において候補化合物を選定するスクリーニングを支援するシステムとなっており、公開データをベースにした範囲で手早く進めたいというニーズにぴったりと合う。それに対し、自社データでじっくりMIに取り組みたい、材料シミュレーションとの統合を図りたい、実際に材料を合成して評価したいというニーズを持つ場合は、日立製作所が提供しているMI向けの「材料開発ソリューション」を活用することで対応が可能である。


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