2021年夏CCS特集:ウェイブファンクション

分子モデリングの最新版、化学シフト計算レシピを強化

 2021.06.29−ウェイブファンクションは、この4月から5月にかけて統合分子モデリングソフトの最新版「Spartan '20」のWindows版とマッキントッシュ版をリリースした。とくに、複雑な分子構造を持つ天然物の構造決定を支援するNMR関係の機能が強化されており、実用的なツールとして注目度が高まっている。

 Spartanは、使いやすさと洗練された美しさを合わせ持つユーザーインターフェースから利用可能なモデリングソフト。最先端の理論化学モデルを装備しており、配座解析、構造最適化、スペクトル解析、数々のグラフィックオブジェクトや分子プロパティを計算できる。新しいSpartan '20は、16コアまでの高性能CPUが利用できるパラレル版と、並列数が無制限のGt16版の2種類のパッケージが用意されている。

 とくに、日本発の機能といえる「DFT(密度汎関数法)を利用した化学シフト計算」は、弘前大学の橋本勝教授らとの共同研究に基づいて計算レシピとして組み込まれたもので、前バージョンから搭載されていたが、今回大きく機能強化された。一般の化学者が適切な手法を組み合わせて正確な計算ができるよう、一連の手順がレシピ化されている。

 まず、配座異性体の発生が自動化され、作業がしやすくなったことに加え、16スレッド以上での並列化効率が向上し、計算速度もアップしている。また、ユーザーが複数のNMR計算プロトコルを選択できるようになり、計算精度を多少犠牲にしても高速に答えを求めるなど、合成研究などに適した使い方ができるようになっている。これらの点に関しては橋本教授が詳しいマニュアルをまとめており、日本語ホームページから近くダウンロードできるようにする。

 同社の日本支店では、ワークショップで利用方法を紹介するなどしてプロモーションを行ってきていたが、昨年来のコロナ禍で対面での開催ができなくなったため、ワークショップの内容を動画にしてホームページに掲載していく予定。 Spartan '20をベースに、順次公開準備を進めていく。


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