2021年冬CCS特集:モルシス

中国市場向けの受注好調、機械学習利用して力場作成

 2021.12.01−モルシスは、独自の技術と長年の経験に基づき、創薬研究および材料研究向けの研究開発支援システムを幅広く提供している。加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)の子会社として日本以外のアジア市場もカバーしており、最近では中国での実績を急速に伸ばしている。

 同社は欧米のベンダーの製品を数多く扱っているが、主力はCCGの統合計算化学システム「MOE」。今年も恒例のユーザー会「MOEフォーラム」が9月に開催されたが、オンライン会議の利点を生かして、今回は日本語・英語に加えて中国語の同時通訳を導入し、中国語での講演・発表が行われたこともあり、参加者トータル400人強のうち、3割は中国からの出席者となった。事業面でも、実際に中国からの引き合いも活発で、今年はとくに好調だという。11月だけで3件を受注した。ベトナムなどこれまで実績がない国からも試用してみたいというリクエストが来ている。

 MOEの機能強化も着々と進行しており、最新版ではハイドロジェン・マス・リパーショニングの採用による分子動力学計算(MD)や熱力学的積分計算(TI)の高速化、GPUを利用したタンパク質ドッキングや抗体モデリングなどの高速化などが行われたことをはじめ、糖鎖関連やアミノ酸変異導入などのユーザーインターフェースの拡張、メディシナルケミストリー関係の機能強化などが行われた。とくに、姉妹製品であるタンパク質立体構造データベース「PSILO」との連携機能に感心を持つユーザーが増えているが、これは人工知能(AI)による立体構造予測がブームになり、多数の立体構造情報を活用して創薬に生かしたいという動きが活発化していることが背景にあるともいえそうだ。

 また、生命科学関係では、スペインのケモターゲッツが開発した新製品「CLARITY PV」に力を入れる。ファーマコビジランス(医薬品安全性監視)情報をトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)に活用することを志向したシステムで、探索段階から臨床試験、市販後までのすべての安全性情報に横串を通し、高度なデータ解析を行うことが可能。ADR(薬物有害反応)シグナルを利用して、未知の副作用が生じる可能性を探ることもできる。

 一方、同社は材料科学向けのモデリング&シミュレーションでも豊富な実績があるが、やはり好調な製品が多い。とくに、機械学習の活用がユーザーの間でクローズアップされてきており、材料設計支援統合システム「MedeA」の開発元である米マテリアルズデザインが今年開催したユーザー会でも、機械学習関連の最新研究事例が数件発表された。MD計算の進行状況をモニタリングしながら、誤差が大きくなってくるのを検知すると、第一原理計算をあらためて実施し、機械学習で力場パラメーターのフィッティングをやり直し、ポテンシャルを再調整してMDを再開するというもの。全自動のオンザフライで行うことを想定しているという。マテリアルズデザイン自身でも機械学習の活用を推進しており、機械学習で作成した力場ポテンシャル「MedeA MLP」を製品化している。MDプログラムのLAMMPSで利用することができる。第一原理計算結果を使って機械学習でポテンシャルを作成するツール「MedeA MLPG」を利用することも可能。

 この1年、コロナ禍で生命科学系の製品群はオンラインで紹介セミナーを実施してきたが、材料科学系製品はハンズオン形式だったため体験セミナーは休止していた。しかし、ネットワーク経由でソフトを操作する準備ができたため、12月から体験セミナーを再開する予定。同社のホームページで日程をチェックされたい。


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