2022年夏CCS特集:分子機能研究所

受託研究での成果が着々、SBDDの独自ノウハウ活用

 2022.06.28−分子機能研究所は、構造ベース創薬(SBDD)の専門的なノウハウをベースに、パッケージソフトの販売や受託研究サービスを提供している。2020年に新型コロナウイルス感染症に対する治療薬候補をインシリコスクリーニングで発見した論文を発表したことが契機になり、受託研究への問い合わせが増えてきているという。大学病院などの依頼も多く、研究結果を論文にまとめるに当たって、計算による考察を加える目的でも利用されている。

 昨年の成果としては、オーラルケア商品に含まれる成分が、新型コロナのウイルス感染経路を遮断する効果を持つことを発見した共著論文がPLOS ONE誌に掲載されている。この研究内容は、6月にデンマークのコペンハーゲン(EuroPrio10)と中国・成都(IADR/APP)で行われた国際学会でも発表されたようだ。

 そのほかでは、ドラッグリポジショニングを目的としたバーチャルスクリーニングにおいて、医学部関係で論文作成中の案件があるほか、企業からの受託研究をもとに特許化が進められている案件もある。実際に、同社の計算技術が有用な成果を出している照明だともいえるだろう。

 また、同社が研究代表となり、助成金を得て共同研究を進める実績もある。文部科学省の「共同利用・共同研究拠点」制度に基づく「生体医歯工学共同研究拠点共同研究プロジェクト」に採択されたもので、2021年度は東京医科歯科大学、お茶の水女子大学、大阪大学と共同で新型コロナの治療薬探索を実施した。有望な化合物を実際に合成してアッセイし、活性があることを確認したという。2022年度は、東京医科歯科大学、お茶の水女子大学、横浜国立大学との共同で「構造ベース創薬によるRARγサブタイプ選択的アンタゴニストの開発研究」が採択された。レチノイド受容体の副作用の原因となるγタイプに対するアンタゴニスト(拮抗剤)を設計することにより、レチノイドの利用範囲を広げることを狙っている。

 一方、パッケージソフトは、米ハイパーキューブの統合分子モデリングソフト「HyperChem」をベースにインシリコ創薬を行う「Homology Modeling for HyperChem」(HMHC)、「Docking Study with HyperChem」(DSHC)を製品化している。ドッキングシミュレーションでは、オープンソースの「AutoDock Vina」や「rDock」といったプログラムを利用できるようにしており、今年3月のバージョンアップで機能強化を図っている。


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